鈴峰らんか

マルタイの女の鈴峰らんかのレビュー・感想・評価

マルタイの女(1997年製作の映画)
3.8
公開当時が97年と考えると、相当強い意志をもって作られたんだろうな。

例えば同じ暴力でも、トロと呼ばれる刑事(伊集院光)が犯人を捕まえるシーンや立花刑事 (西村雅彦)が舞台で大立ち回りをやってのけるシーンと、教団側が磯野ビワコ(宮本信子)を襲うシーンは全く持たせてある意味が違う。集団で手段を選ばずに襲い掛かるという卑怯さや残忍さがありありと描かれていて、本当に怖かった。こんなときに衣装がお乳丸出しのゴージャスなクレオパトラなのが、起きていることの恐ろしさと画で見たときの面白さがちぐはぐで脳がちょっとパニックになる。こういうセンスがやっぱり天才だと思う。

他にも、急に呼び出されたマネージャーが泡まみれで子供とお風呂に入っていたり(ほんの数秒)、犯人の大木珠男(高橋和也)がカラオケで「大都会」を歌っていたり、そういう人間一人ひとりの背景が見えるように作ってあるところが人間への愛を感じられて好き。

役者への愛も感じられるのが、多数のバイプレーヤーがほとんど当て書きのような役で出演しているところ。これはこれでオールスター感があってうれしい。特に伊集院光は伊集院光史上一番カッコいい役をもらったんじゃないだろうか。知らんけど。今なら絶対若手イケメン俳優がやる役だな。

伊丹作品はその映像の明るさと巧妙なセリフの掛け合いから生まれるテンションの高さみたいなものが面白さになっていて、今作でもそれにはとても救われた。最後にビワコがかっこよくセリフで伏線回収プラスαしていったのはすっきりした!
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