ウサミ

孤狼の血 LEVEL2のウサミのレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
3.5
「広島の治安守ってんのはお前だけじゃねえんだよ」

前作の『孤狼の血』は、「魂に焼き付く暴力とカタルシス」の文言に違わぬ、圧倒的な熱量で、心を奪われたのを覚えています。

悪のツラを被りながら、そこに流れる正義の信条。
正義のツラを被りながら、そこに流れる悪の狂気。
2人の人物を対比させながら、正義と悪、白と黒、綺麗事で片づけられないものを、それら全て飲み込んで、グレーに染まりながら茨の道、戦いの道へと立ち向かう“孤狼”の誕生を描くエネルギーは、日本版『ダークナイト』、いやむしろそれをハリウッド版『孤狼の血』と言わせる(?)くらいのシビれる魅力があった。

清潔でエリートながら、一線を超えた時どこまでも落ちていきそうな危うさを抱えた刑事を、好演していた松坂桃李。
今回は、彼を軸に添え、圧倒的な悪の存在、鈴木亮平を置きドラマを展開します。
前作が圧倒的な熱量を感じる作品だっただけに、本作はどうしても小さく、軽く見えてしまう。
というのも、本作から感じる熱量は、割と“バイオレンスアクション”としての熱量にとどまるように思えたのです。
前作を観て、バイオレンス映画としての熱量を一番に感じた方からすれば、本作は素晴らしい続編だと思います。
ハードな描写も、血みどろのバトルも、暴力への恐怖も、徹底的に描かれています。なにより、鈴木亮平の起用は個人的に少し違和感がありましたが、恐怖の存在そのもので、本当に素晴らしかったです。

ただ、個人的には、前作において僕が感じた熱量は、正義だの悪だの、「現場」の人間からすりゃそんなものは戯言、机上の空論、温室からぬくぬく観る僕のような若者が、あたかも自身の哲学のように語るもんだと、こき下ろしつつも、結局は、戦って市民を守るという正義、それが脈々と「血」で受け継がれていくヒロイズムでした。それが、たまらなくカッコいい。
講釈たれず、暴力で!という姿勢が、恐怖とともに、憧れ、たぎる情念として襲いかかってきた。
松坂桃李の覚悟も、決して上部をなぞらうではない、狂気的ながら新たな正義の形として、それはもう興奮した。
そういった熱量を本作に期待してしまったために、少し肩透かしを喰らったのが僕の感想でした。

しかし、村上虹郎が良かったです。
そりゃ、怖いもん。鈴木亮平。
従わなきゃ、殺されるもん。目、大事やもん。
観客の暴力に対する恐怖を、しっかりと肌で感じさせてくれ、エンタメとしてのバイオレンス映画ではなく、あくまで「ヤクザ映画」(ヤクザを扱った映画)としてのバランスを保っているように思えました。

映画のテーマも、イマイチ見えにくい。前作のテーマに囚われた松坂桃李の苦悩を描くには、全体的にメリハリをかんじませんでした。
また、刑事VSヤクザにとどまらず、もっと大きな、正義と悪の枠組みそのものに目を向けさせる展開は、嫌いでは無いですが、本作の描かれ方だと、少し後付けというか、輪郭がボヤけた印象です。
ラストシーンのシマリの悪さも、スマートさが感じられず、イマイチ映画館を出る時の味わいを損ねる原因になってしまったのが、残念でした。

しかし、役者の演技、徹底した暴力描写、テンポ感のある脚本、とても素晴らしいですので、映画館にてお確かめください。

⚠️残酷な描写や暴力シーンがあるため苦手な人は注意
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