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search/サーチのohassyのレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
3.5
「全てPC画面だけで構成する」というアイデアは特に新しいものでもなくて、最近もリリカルスクールの「RUN and RUN」のPVが話題になったりしたし、ものすごく手前味噌なことを言えば、とある自治体のUターンプロモーション企画として、FBの画面だけで同窓会の誘いから結婚までを描くっていう企画も考えたことがある。

だからアイデア自体は対して新しくもないのだけれど、これを長編映画として成立させられるかどうかは全く別の話だ。
音楽PVにせよ広告にせよ、それはもともと拠り所のある作品だし、長くても5・6分の作品であるのに対して、映画はゼロから物語を紡ぎださなくてはならないし、そのほとんどは90分以上の長さだし、何よりお金を払って観るもの。
PC画面だけで展開させたら面白くね?みたいなだけの映画だったら怒るよ?

前評判が示しているように、怒るようなことにはならなかった。
空撮とかちょっと反則かなとは思ったけれど、全体的にはものすごく練られた精密な構成。
むしろリアリティが増幅されていたし、画面ならではの演出が父親の心情を見事に表していた。
綺麗だったデスクトップが散らかってしまうシーンは、本当にドキッとした。
余裕がない時って本当にデスクトップ散らかるよ。

ご自身のスマホがiPhoneの方はちょっと見てもらいたいのだけれど、「設定」アプリのバッテリーを見ると「アクティビティ」というところがあって、そこには「1日どのくらい画面表示がオンになっていたか」が明記されています。
それを見ると、僕なんかは休日などの長い時は7時間くらいオンになっている。
平日でも5時間くらいはオンになっていて、仕事はほとんどパソコンを使っているから、そうなると多い時は1日の半分くらいはモニターを眺めている計算に。
ということは、モニター画面こそが僕らのもっとも馴染みのある風景で、リアルそのものということになる。
タイピングやカーソルアクションひとつひとつに、人物のキャラクターや真理を感じることができるのも、至極当たり前のことだ。

そういったことを改めて感じられる、なかなかに面白い体験ができる作品だった。
冒頭の草原デスクトップ画面を大きなスクリーンで見た時は、なんだかえも言われぬ感慨を覚えたものです。
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