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search/サーチのmaverickのレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
4.7
これは傑作!
パソコンの画面上でのみストーリーが展開されるという秀逸なアイデア性が素晴らしい。既存の概念を覆す大胆な発想による映画というのはこれまでも多く生まれてきた。本作もその一つであり、その作品性は未来永劫語り継がれることだろう。

パソコンの画面上と聞き、自分はウェブカメラの一人称視点のことだと思った。だからさほど興味を抱かずに公開当時はスルーしてしまったのだが、本作の映像はウェブカメラだけにとどまらず、パソコンで出来ること、パソコン上で再生できる映像を色々と駆使している。その使い方が凄いなと。パソコンで何でも出来てしまう世の中だからこそ、こういう見せ方も出来るのだなと。SNSやら動画配信サービスなど、今が旬なコンテンツを盛り込んでおり、現実と全く同じ世界観で違和感は皆無。誰にでも起こり得る物語として成立してあるところが面白かった。

こうしたアイデア性だけではなく、ストーリーも優れている。突如失踪した娘を懸命に探す父親を描く物語だが、手掛かりは彼女が残したラップトップパソコンの中にある。パスワードを解除し、中のデータから失踪した理由を探す。今時の女の子らしく、Facebookやインスタのアカウントを持っている。そこでやり取りしている友達から手がかりを探ってゆく。父親は年頃の娘と溝が出来ており、娘の友人や普段の私生活ぶりに皆無という設定も作品の謎解き要素と上手く絡めてある。父親の知らない娘の世界が次々に判明してゆくだけでも面白い。SNS上での関係性を構築していたりと、非常にリアルな話だ。家族との関係性が希薄なこと、SNSなどのあり方などを考えさせられる。脚本も兼ねた監督は、現代社会のこうした問題点を見事に作品に反映している。社会派な作風であることも高い評価へと繋がった。

監督はインド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティ。本作が長編映画監督デビューとのこと。今作のヒットで間違いなくオファーが殺到するであろう。主演は映画『スター・トレック』のジョン・チョー。彼はアメリカで活躍する韓国人俳優。本作はメインキャストのほとんどをアジア系俳優で固めてある。『クレイジー・リッチ!』が大ヒットし、韓国の『パラサイト』がアカデミー賞作品賞を受賞したように、多様性が叫ばれているアメリカにおいて、本作も起爆剤となった。自分は映画に政治色を持ち込んでほしくないと思っているが、人種関係なく優秀な才能ある人が正当に評価されてほしいとは思っている。それに本作は単純に面白い。映画界の最高峰であるハリウッドで、アジア系の作品が旋風を巻き起こしていることは誇らしいことだ。様々なことから刺激を受けて、ハリウッドの映画業界もさらなる発展を遂げてもらいたい。

大胆な発想が話題の作品であるが、そこだけに囚われずに家族愛を軸に描く物語性なのが素敵だった。冒頭の家族ムービーだけでもう泣ける。SNSばかりにかまけてないで、大事な家族との時間を大切にしてほしい。そんな監督のメッセージが込められているようだった。親も子供を理解しようとしなきゃ駄目だね。年頃の子供を持つ親に差し出がましいようだが一つアドバイスするならば、子供の話に興味を持ってあげること。大人から見て理解出来ないこともあるけれど、ちゃんと興味を持って同じ視点に立ってあげる。好きなことも嫌いなことも同様に。いつになっても人は自分を分かってほしいと思うもの。溝が出来るのは理解してもらえないからだ。自分も子供の頃、親にいろいろと分かってもらえなくて寂しかったことを覚えている。好きな漫画やアニメ、ゲームの話をしても「遊んでばかりいないで勉強しなさい」と言われてしまったり。嫌なことや悩んでいることも軽く済まされてしまったり。だからそれを共有出来る友達を見つけ、親の知らない自分だけのコミュニティを構築してた。子供と趣味が合い、頻繁に話す友達感覚の親子はこうした悩みは少ないんじゃないかな。そんな自分も壮絶な反抗期を経て、今は両親が大好きだけどね(笑)。親子の関係性を考える良いきっかけの作品になると思う。

新型コロナウイルスの影響で映画の製作もストップしてしまっているが、本作のようなアイデア次第では面白い映画を新たに生み出すことも可能だろう。大胆な発想がいかに重要か思い知らされたなぁ。とりあえず日本の企業は本作にあるように、リモートワークをさっさと取り入れなさいな。
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