KANA

真実のKANAのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
3.7

カトリーヌ・ドヌーヴ
ジュリエット・ビノシュ
イーサン・ホーク
リュディヴィーヌ・サニエ

こんな豪華キャストを集めてフランス映画まで撮ってしまった是枝監督、スゴーイ!
ミーハー魂がまずそこに感心する。笑
ビノシュとは以前から交流があったみたいだけど、パルムドールを獲ったとはいえ、かのドヌーヴ様にどうやってオファーしたのか、下世話な好奇心がフツフツ…

一見平和で和やかな家族像、フタを開けてみればおそらくたぶんきっと、どこも小さな心理的衝突が渦巻いていて、家族といえども自分のありのままをいつもさらけ出してるわけでなく…という、普遍的な内容を母と娘に焦点を当てて描く。

ドヌーヴ演じる大女優のファビエンヌは本当は弱い自分と向き合えず、プライドばかりが先に立つ。
ビノシュ演じる娘リュミールは幼い頃から家庭を顧みない母が嫌で女優にはならずNYで脚本家に。
パリで久しぶりに再会した2人はそれこそ演技合戦してるみたい。
まぁ、はたから見るとファビエンヌは実生活でも女優然としてるのが逆に不器用過ぎて、リュミールのほうがうわてに見えたかな…
でも血の繋がった親子ならではの気の置けなさを見せるシーンもたっぷりあって、仲がいいのか悪いのかスパッと割り切らない感じがまさに是枝テイスト。

映画の中に出てくるSF映画が、
「地球に居続けると長く生きられないから普段は宇宙で過ごして数年おきに地球の娘の元に帰ってくる。だから母親はいつまでも若いままだけど娘の方は母が帰ってくるたびに年老いていく…」
という内容で、娘の晩年期をファビエンヌが演じるのだけど、これはこれで個人的に興味津々だった。

他愛もない話題で「記憶って頼りないものね」というセリフが何度か出てくるけど、ホントそう思う。
ファビエンヌとリュミール親子を見てて、個人が信じる「真実」がいかにエゴイスティックで主観的なものか、ふと考えさせられた。

ドヌーヴの堂々たる演技は貫禄十分だし、ビノシュはこれまた柔軟な大人の演技が板についてる!
この2人が揃うと若さを凌駕した余裕や、フレンチなエスプリがたっぷり漂って日本人が監督してることを忘れそうになる。
生パリジェンヌは愛想笑いなんてしない。

そしてリュミールの夫役のイーサン・ホークがまた"イーサン・ホーク"なポジションでいい味出してる。
娘とじゃれあうシーンにほっこり。
フランス人がパートナーってことで『ビフォア〜』シリーズを思い出したり。

「真実」とか、女優とかいっても特別高尚なことがテーマなわけじゃない。
時々ドヌーヴの見透かしたようなセリフや物言いが希林さんに見えてきたり、
"母と息子"が"母と娘"に変わってるけどこれまでの是枝作品とオーバーラップする。
一番は、シンプルそうに見えてフクザツな移ろいやすい人のココロを簡単に白黒つけない。
敢えてモヤッとさせる。
とはいえ、このラストは爽快なものがあった。
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