てつこてつ

わがチーム、墜落事故からの復活のてつこてつのレビュー・感想・評価

3.8
2016年に起きたこの飛行機事故のニュースは何となく記憶にあるが、サッカーに全く興味が無い人間なので、犠牲者の大半を占めたシャペコエンセなるブラジルのサッカーチームの存在は知るよしもなかった。

このドキュメンタリー作品は、飛行機事故直前のシャペコエンセの活躍ぶりから墜落機に乗り込む選手の様子、事故直後、主力選手のみならず運営トップをも失ったチームをいかに新経営陣が再生させるか、さらには、事故機から奇跡的に生還した3名の選手が再びチームに関わっていく姿などを、約6ヶ月という、ドキュメンタリー物としては比較的短期間で追っかけた内容。

描かれる期間は短くとも、人口約20万人という小さな都市の熱烈なファンに支えられたサッカーチームの運営サイド、事故後に新しく迎え入れた監督、事故機に乗り合わせていなかった前シーズンからの選手たち、大切な夫を失った若き未亡人たち、そして、片脚切断、脊椎損傷などそれぞれ重傷を負った事故機に搭乗していた選手たち、それぞれの目線で語られるその内容は非常に濃厚で見応えがある。何よりも、描かれ方に偏りがなくて公平。

未亡人達が亡き夫の肖像権を巡る裁判を起こす下り、突如加わった新監督の采配に納得が行かない選手たち、そして、何よりも、事故からチームへの復帰を目指す3名の選手たちの内に秘めた複雑な心境など、生々しくもドキュメンタリーならではのリアリティがある。

個人的には、「神に救われた命」だと語り、聖職者の道へ進むことも考えたと語る一人の選手の言動やどこか人生を達観したかのような表情を浮かべる様や、夫を亡くした若い妻が形見としてロザリオをチームメイトに託すエピソードなんかは、ブラジルというキリスト教的死生観が強く根付いたお国柄故に出る発想なんだろうなと妙に感心してしまった。

Amazon Prime Videoで配信中。
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