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メン・イン・ブラック:インターナショナルのsanbonのレビュー・感想・評価

3.1
「シャザム!」といい「ゴジラ:キングオブモンスターズ」といい「MIB:インターナショナル」といい、そろそろ日本語吹替版の製作委員会にはちゃんと仕事しろと言いたくなる。

僕は映像を最大限に楽しむ為に、洋画は基本日本語吹替版での鑑賞を好んでするのだが、ここ最近の吹替のクオリティは例年に比べてもかなり質が悪い。

選考基準は言わずもがな、技術力などは度外視した今をときめく人気者であるという要素だけなのだろうが、それならそれで作品に支障が出ないよう、演技や演出面では制作側が尚の事妥協をせずに取り組んで頂きたい。

今回の違和感の主は、テッサ演じるエージェントMの声を当てた今田美桜だ。

誰がどう聞いても浮いており、あの演技でOKテイクになった理由を知りたいと思う程であった。

ちなみに、今田美桜は劇中内でも本人役としてゲスト出演をはたしている。

なるほど、つまりあのシーンはテッサの声を当てた各国の声優がそれぞれ差し替えられて編集されていて、国別にバージョン違いが存在しているのだろう。

という事は、この事態を招いたのはそもそもの大元であるMIBの製作陣という事になる。

というか、吉本坂46とのタッグも話題作りの一環なのだろうが、製作委員会はその要素が逆に敬遠されているとは誰も思っていないのだろうか?

そんな小細工を仕掛ける程作品自体に自信が無いのなら、はじめから作るなよと思ってしまう。

エンタメ業界にあって皆に疎まれる仕事なんて、やってても虚しいだけですよ。

さて、それでは肝心の内容に移ろうと思うが、結論から言うと及第点はなんとか超えられたかなという実感だ。

まず、モリーが20年間もMIBを追いかけ続け、ようやく接触に成功するくだりなんかは中々観ていて面白かった。

情報を探る為、様々な諜報機関の面接を受けては変人扱いされて落ちまくるところなど、ユーモアを交えつつも彼女の行動力の凄まじさと優秀さを端的に示すのに一役買っていた。

Hも筋骨隆々でハンサムだけど、間抜けなチャラ男風で一部の同僚からも煙たがられていたり、まさにデコボココンビらしいキャラクター設定だと思う。

あと、今回新たなコンビになるのが「H&M」というのは狙っているのかな?(余談)

そして、そこに今回はポーニィという異星人が加わり、実はトリオとして描かれている訳だが、この存在が今作では一番いい要素になっていたかもしれない。

前シリーズのJ&Kコンビは、老練な激シブおじさんと、ノリと体力だけの黒人青年という、これ以上にないデコボコ感が見た目から既に漂っており、いつもどこか行き当たりばったりで、そのくせちゃっかり地球は救っちゃう姿に毎回痺れてきた訳だが、今回のH&Mコンビはそれと比べるとどうしても見劣りしてしまう。

しかし、その事態は製作陣も承知していたのだろう。

そこに、もう一体マスコット的な可愛らしさを併せ持つギャグ要員を入れる事により、少しでも前作のコンビにクオリティを近付けようという努力が垣間見え、その甲斐あってかなんとか試みは成功していたように思う。

ちなみに、ポーニィの吹替を担当したのはトレンディエンジェルの斎藤さんなのだが、これは意外にハマっていて思いのほか声優としていい働きをしていた。

そして、ここからが今作最大の物足りなさポイント。

前シリーズと比べて今作で最も足りないと感じた要素は、日常生活に溶け込むエイリアンの描写の少なさだろうか。

MIBシリーズは、人間に擬態したエイリアンが日常のすぐそばに潜んでいる姿を描く事により、フィクションの世界にどこか親近感を持たせると同時に危機感を演出し、それがウケた要因の一つなのだと解釈しているのだが、今作に関してはそういった描写がほとんど無い。

ナイトクラブのシーンも、エイリアン達だけの秘密の社交場だったし、今回人間とエイリアンがアクシデント的に遭遇する場面が極端に少なく、本来なら髭に擬態したエイリアンのような存在はMIBを語るうえではもっとたくさん登場させなくてはいけないし、顔を奪われドロドロに溶かされた青年のような被害ももっとあった方が良かった。

これがないから、地球の危機という感覚が伝わってこなかったし、特に被害が拡大する様子も無い為、画面にもどこか緊張感の無いまま物語が展開していってしまっていた。

あとは特にストーリーも映像も特筆すべき点は無く、無難に仕上げてきた印象であった為、もし続編ありきで考えているとしたらかなり弱いが、単発でならそこそこ客は呼べるクオリティではあったかなという感じ。

正直、鑑賞後の余韻としては箸にも棒にもかからないような作品であったが、シリーズの世界観が好きなら観に行ってみるのもアリなのでは?
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