はる

ビューティフル・ボーイのはるのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.0
ヒュルーニンゲン監督の作品ではタイムラインを巧みに操るのが特徴だと公式にもあるが、確かにそうだと感じた。過去作品よりも今作はそれほどでもないそうだが、実際はフラッシュバックが多く、かつての「ビューティフル・ボーイ」の輝きが失われていく過程を観ることになる。つまり今作は本来の引用(ジョン・レノンの曲)としての美しさを描いていないように感じた。にも関わらずこのタイトルが相応しいように思えるのは主演の魅力に依るのだろう。

ネタバレになるが、導入から中盤までは会話や家族構成で違和感があり、それらは少しずつ回収されていく。そうすることでニックの当時の状況やこれまでの経緯が強調されている。また父親役であるスティーヴ・カレルの視点で物語の多くが進んで行くことも良い意味で意外だった。
タイトル&予告編で想像していたよりも「主演ありき」でなく、周囲にいる人たちのそれぞれの立場、視点が描かれ、またそれらは時間とともに変化していく。その中で父と子の関係性もまた揺れ動くが、父親の深い愛情が我が子の再生を促す。劇中でもニックのセリフとして言及されているが、今作自体が「ドラッグを描いているのではなく、家族の、とりわけ父子の絆の物語」だったのが本当に良かった。

ニックの内面を推し量ろうとすると、やはり象徴的だったのはジャスパーと荒れた海に入ろうとして、カレンがジャスパーだけを止めるくだりだろう。母親として真っ当な判断なのに、それが違う意味を持ってしまう。そうした経験を繰り返してきたのだろうと考えると苦い。

直近で観た『バイス』も今作と同じくブラピのPLAN B製作で、スティーヴ・カレルが出演していたから、彼のまったく異なる演技を続けて観られたことも楽しかった。

撮影もほぼ自然光や実際の照明だけで撮られていて良い絵が多くあったと思うし、やはり主演のティモシー君の魅力を引き出そうという強い意向を感じた笑。

そしてディカプリオの初期のキャリアがそうであったように(『バスケットボール・ダイアリーズ』)、「有望株のその時」がこうした題材の作品として残されるというのは必然なのかもしれない。
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