真鍋新一

華やかな女豹の真鍋新一のレビュー・感想・評価

華やかな女豹(1969年製作の映画)
3.5
もはや改めてこの映画についてなにか言うことはないだろう、という後年のサブカル視点での昭和文化再評価狙い撃ちの作品。浅丘ルリ子の美しさはただ美しいだけではなく、もはや"人間ではない何かである"ということに何の疑いもない。それは映画を作っているほうもハッキリと自覚していて、平気でルリ子は瞬間移動をしているし(ただカット割がキテレツなだけかもしれないが)、そのあたりは宍戸錠の不気味すぎる神出鬼没ぶりに近いものがある。

ルリ子とその他すべての凡庸な男性たちとの対比をバキッとさせることだけをひたすら描き続ける映画はもはやルリ子の奴隷。話の進行上、いろいろな事態が起こりはするが、結局は「俺はいいけど、RURIKOがなんて言うかな?」みたいなことをずっと緊張しながら眺めているわけである。

弘田三枝子、黛ジュン、ピーターの名曲歌唱シーンと、BGMでかかる「謎の女B」、そしてルリ子自らが歌う「シャム猫を抱いて」、しかし歌謡曲関係の場面だけにしても、よくもまぁこれだけの要素がこの映画1本に集まったものだ。

最後に真面目なことを言うけど、ルリ子は日本映画における女性の地位の低さについて、その存在でもってひとりで戦い続けていた人だったのだな……などと、子役時代からのルリ子の姿が走馬灯のように見えてきた。
真鍋新一

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