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ロケットマンのがんがんのレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
4.0
本作を観るまでは、エルトンジョンのことを奇抜なホモのやべえ奴と思ってました。

本作を観終わった後は、エルトンジョンのことをドレミファソラシドに愛された永遠の少年だと思いました。


ボヘミアンラプソディと同じ監督ということで比較をすると…

あっちは徹底して俯瞰的視点による、クイーンというバンドの成功の物語を、フロントマンであるフレディマーキュリーを主役に立てて描かれたエンタメ。

こっちは徹底して内向的視点による、エルトンジョンのアイデンティティを探る一人称のドラマでした。


幼少より親からの愛情を受けられず、セクシャリティーに悩み、自尊感情が低いため内向的な世界に閉じこもってしまったエルトンジョン。

しかし音楽の神様だけは彼を愛してくれた。

ドレミファソラシドの中に潜っている時だけは自己表現ができる。

どんなに名声や富を得ても、自分を愛してくれる人はいないし、自分を理解してくれる人はいない。自分すらも自身を愛せない。

唯一彼のことを愛してくれた音楽とともに、エルトンジョンの人生を振り返っていく素晴らしい物語でした。



心揺さぶられた演出の数々。


グループ討議による依存症のリハビリ=エルトンジョン自身の人生の振り返り。

奇抜なステージ衣装→ツノを折る→ガウン→ジャージと、虚構の自分からありのままの自分へ、告白をしていくたびに姿がだんだん変わっていく。


冒頭のミュージカルシーンでマジョリティとマイノリティの表現。マイノリティであるエルトンジョンと幼少期の自身はあえて奇抜な発色で。マジョリティである大衆はモノクロで表現。

みんなで一緒にダンスをしているが、心のどこかで世間に受け入られることのできない隔たりがあることを冒頭より示唆されている。


ライブ会場での無重力状態のエルトンジョンと浮遊するオーディエンスの表現。

素晴らしいライブを体感した時に起こる地面から飛び上がっているあの感覚。胸に響く重低音、メロディの海にのまれ空気が振動し鳥肌が立つ。あのライブ会場の感覚をビジュアル的に完璧に表現されていた。


救急車の搬送からライブ会場への衣装チェンジ。タンカーに乗せられて薬を吐いているのに、いつのまにか衣装に着替えさせられて会場に。

もう音楽から逃げたいのに、周りからはそれを許されず、自分の意思も無いのにステージに上げられている。この流れがドラマティック過ぎて、見たことのない表現方法だった。


ラストはまるで旧エヴァ26話、世界の中心でアイを叫んだけものだった。おめでとうって拍手して終わる感が半端なかった。

親から愛されなかった息子が自己愛を確立し、周りから最後は認められ自尊感情を取り戻せたという終着点としては旧エヴァと完全に同じですね。



本作の出来はミュージシャンによる伝記物語の完成形としての到達点だと思いました。とても素晴らしい映画でした。映画的完成度でいうとボヘミアンラプソディを遥かに凌駕してました。はてさて興行収入的には如何に…?!


ところでエルトンジョンのマネージャーをした後、クイーンのマネージャーになったジョンリードという男…波乱の人生過ぎる…この人だけで2時間の映画一本作れそう。



あと子役似過ぎ!!!!




(ゴールデンサークルを観直しながら書きました。ウェンズデーウェンズデーナイトオールライト!)
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