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ジェニーの記憶のyumeayuのレビュー・感想・評価

ジェニーの記憶(2018年製作の映画)
4.0
"この物語は私の知る限り事実である"

世界的なドキュメンタリー監督であるジェニファー・フォックスが自身の体験を自ら映像化。
つまり今作の主人公は監督自身(演じているのはローラ・ダーン)。

ストーリーは、ジェニーの母親が彼女が13歳の頃に書いた作文をたまたま見つけたところから始まる。そこにはジェニー本人と思われる少女と成人男性との性的関係が描かれており、母親はジェニーが性的虐待を受けていたのではないかと彼女に問い詰める。

年上の男性と付き合っていたのは事実だ。
自分は同年代の子供たちより大人びていたし、しっかりしていた。
しかもあれは真面目な恋愛だった。
しかし何故だか細かな記憶が不鮮明だ…。

物語を語る過去の自分。
記憶を探る現在の自分。
徐々に明らかになる真実。

ジェニーは自らの記憶を辿り過去の関係者たちに取材を進めるうちに、自分がいかに幼稚で大人に都合よく扱われていたかを知る。
これはある種のマインドコントロールのようだ。
思春期に差しかかろうとしている13歳という年齢。自分が大人と対等だと扱われると嬉しいと思う気持ちはわかる。
孤独感や心の隙間につけ込み、到底信じ難いようなうわべだけの言葉をちらつかせる大人たち。
大人だって騙される人はいるのだから、善悪の判断のつかない子供ならなおさらだろう。
間違ったことだと薄々感づいていながらも、身を捧げてしまった子供に罪はない。

これはとにかく胸糞悪い。子を持つ親として他人事ではない気持ちだ。
主人公の親も含め、出てくる大人がみんなロクでもない。歪んだ性癖をもった大人のおぞましい素性。こんなの愛でもなんでもない!

怖いのは、被害者が被害者であると自覚することの難しさだ。大人だって声を上げるのは勇気がいることだ。
衝撃的な体験は時として記憶までも改変し、封じ込めてしまう。これは自己防衛の一種なのだろうか。

レイプとはいかないまでも、痴漢や悪戯を含めたらジェニーと似たような体験をした子供は多いのではないか。世の中にはこのように明るみにならない事件が幾多と存在していると思うと胸が苦しい。

物語の結末がやや投げっぱなしな気はしたものの、こんな辛い体験を自ら作品として世に出した監督の勇気と行動力に敬服する。
そして演じた役者たち、製作会社のHBOにも敬意を払いたい。
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