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ヘイト・ユー・ギブのkのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.3
黒人差別を扱う作品はどれも強いですね。ある種アカデミー賞での必勝テーマ的な存在にもなりつつありますもんね。白すぎるオスカー以来、むしろ黒人に忖度しているのではないかというほどに敏感に過剰に黒人差別映画がノミネート、そして受賞という流れが確立されています。なんかそれも違う気がするなぁ、という思いの今日この頃です。

黒人の少年が白人警官に殺されて、そこから巻き起こる騒動を目撃者の女子高生を軸にして描いたのが本作。思わず実話かと思ったら、どうやら実際の事件にインスパイアされただけのようです。その事件というのが「フルートベール駅で」で描かれたオスカーグラント射殺事件。事件の様子がスマホで偶然撮影されたことから、作中でも描かれた通りスマホとの密接な関係がつきものです。「ゲットアウト」でもありましたね。さて、白人警官が黒人少年を射殺する、この文句だけでどれだけの人が「差別」という言葉を思い浮かべるでしょう。それは恐らく100%の割合です。ではそこに何があるのか考えると、それは「先入観」です。作中では、警官は、視界の悪い夜に少年がヘアブラシを手にしていたのを見てそれが銃だと思い発砲した、と示されています。場合によっては言葉で制止できた場面ですが、警官は撃ってしまった。黒人が手にしていたものであれば、銃に違いない、少年は麻薬の売人だったから銃を常備してるはずだ、黒人は野蛮ですぐに発泡してくるから先に撃ってしまえ、これらはみな「先入観」によって引き起こされた推論でしかないです。過去に前例があって推論が理論化されている場合もあるかもしれないにせよ、十中八九そうではないはずです。全く、何人死ねば分かるのやら。

で、作品としてはどうか。簡潔に、よく出来てます。実話じゃないから説得力が無い、なんて感想くそくらえ。あくまで事件を通して、周囲の人間の支えを受けて、成長して行く女子高生のお話です。黒人差別が悪いとかは言ってしまえば二の次で、自分が事件の目撃者になってしまった時に、圧に屈するのか、立ち上がるのか、自分が麻薬の売人の友人だと友達に知れたら、友情が破綻するから黙っておこう、それとも彼はそんな人じゃないということを分かってもらおう、こんな二者択一で葛藤しているようなお話です。事件はもちろんショッキングだし、メインで描きたいメッセージは間違いなく事件のことかもしれませんが、こっちの方がよっぽど面白くて好きです。あと、主人公の家族関係が羨ましいです。お父さんに惚れます。良いお父さん。(途中キングへの報復に走ってしまうとこ以外は)
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