なべ

ドクター・スリープのなべのレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.6
原作からしてシャイニングの続編ではなく、地続きの別作品って言われてたの知ってたから、ドクタースリープは続編だと思わずに臨んだ。

前作シャイニングでは、ダニーの能力ってあっても意味なくね?って扱いだったでしょ。ドクタースリープはそのチカラをめぐる物語。能力者の「かがやき」を食らう悪鬼との戦いの話なのだ。そう、ホラーじゃなくて、能力者同士のバトルムービー。
そうとわかればこの仕上がりはなかなか悪くないのでは? いや、結構おもしろいんじゃないかなあ。
ゆったりしたストーリーテリングは好みが分かれるだろうが、ぼくは好き。大好き。

あの事件以来、風呂場腐敗婆(こいつめっちゃしゃしゃってくる!)とか、盛会紳士など、展望ホテルの魑魅魍魎どもに悩まされ続け、とうとうアル中にまで落ちぶれた(これ、マイク・フラナガンの傑作ドラマ「ホーンティング・オブ・ヒルハウス」の末っ子と同じ!)ダニーの社会復帰、彼がドクタースリープと呼ばれる所以等、しみじみしたエピソードを経て、連続児童殺人事件の目撃(能力による)者アブラとの出会いで本筋スタートという構成。
能力の見せ方や悪鬼どもの極悪非道なやり口はマイク・フラナガンの得意とするところなので、そこは気持ちよく(気持ち悪く)、安心して堪能できる。原作ではアブラがあまりに強すぎておもしろくないらしいんだが、映画ではうまいことバランス取ってる。善悪の攻防は結構楽しめた。

しかしだ!
終盤になって展望ホテルに向かうのが強引。かなり無理がある。てか、どうしてもシャイニングの続編にしたいスタジオ側の意向が見えまくり。それまでの話がそこそこおもしろかっただけに、ホテルの話いる?って感じなのだ。銃で殺せるのに。
実際、懐かしさ以上の効果はなく、正統な続編ターミネーターのズッコケぶりにも似た残念臭が漂ってた。これなら同じくシャイニングをメタ利用してたレディプレイヤーワンの方がよっぽど気が利いてるよ。
キューブリック財団のバックアップを得て、展望ホテルを完全再現したのはいいが、これで予算を使い果たしたのか、かつての登場人物は今どきのCGではなく、なんとそっくりさん。これがまた似てるようで似てなくて、いや、似てないのに似せようと無理してるというか…。痛い仕上がり。なかでもジャック・ニコルソン役の人はもうこれじゃない感が酷くて、正直、お前誰やねん!と見てられなかった。結構重要な役どころなのに。無名の役者にジャック・ニコルソンの怪演が真似できるはずもなく、トホホな脱力感が懐かしシーンに水をさす。本当にこれでよかったの、マイク・フラナガン?
ことほど左様に、展望ホテルシーンはガッカリな出来。そりゃそうだ。あのキューブリックにかなうわけがないのだ。
まさか、オマージュシーンがこんなに残念だとは思わなかった。
見終えてすぐに思ったのは、シャイニングが観たい!だった。

マイク・フラナガンの実力はこんなものじゃないので、ネトフリ加入者はぜひ「ホーンティング・オブ・ヒルハウス」を観て欲しい。連続ドラマだけど、家と家族のホラーなんですよ。怖くて、悲しくて、切なくて夜中におしっこ行けなくなるかも。
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