なべ

サンクスギビングのなべのレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
3.9
 ころっと忘れてた。予告編は何度となく見てたはずなのに。グラインドハウスのフェイク予告編だったことなんてすっかり忘れていた。

 始まって早々、スクリーンからベテランの映画職人の息づかいが感じられて、おや、アタリなのか⁉︎ と嬉しい予感が。
 予感的中。実によくできたエンタメホラーだった。目新しい試みなどひとつもないのに、これまで散々使われてきた演出の一つひとつがいちいちツボにクリティカルヒット。最後まで身じろぎひとつせず、まるでお地蔵さんのように集中して観てた。
 冒頭の感謝祭セールの暴動シーンの見事なこと。暴動が起こるきっかけはもちろん、客の鬱憤が募っていく様子、各キャラクター設定、人物配置、はち切れる瞬間、そしてゴア描写と、どれをとっても完璧としか言いようがない。きっとスタッフも撮影中に手応えを感じていたに違いない。なんとなくドヤってる感じがしたもん。調和のとれた暴力表現とはおかしな言い方だが、ほんと完璧なのよ。まあ騙されたと思って観てみて。観たら納得していただけるから。
 華々しくリブートして失速したハロウィンに代わってサンクスギビングが、あのマイケル・マイヤーズに代わってジョン・カーヴァーが今後祝祭日の殺人鬼として威勢を誇るのだ!
 ちなみにジョン・カーヴァーとは英国からニューイングランドに上陸した清教徒・ピルグリム・ファーザーズの一人で、プリマスの初代知事。お面になるほどの有名人とは知らなかったが、うん、絵になるやん。
 帰ってから、グラインドハウスのフェイク予告編を見てみたが、ああ、あったね。やっと思い出したわ。てか、この予告編おもしろい! と予告編の弾けた毒気に目を見張りつつ、よくこのエグいのをあそこまでまろやかに仕上げたな(レーティング下げたな)と感心したわ。できればトランポリンのシーンは予告編通りでお願いしたかった。だって、ぽよーーん、ぼよよ〜ん、グサッは予告編の方が絶対正解なんだもん。
 攻撃の瞬間より、その後の死体の損壊に執着するフェティシズムがこれほどキマってるハリウッド製ホラーがあったろうか(井口昂や三池崇史の潮流をこんなところで感じるとは!)。
 いやあ、これはいいホラー。トークトゥミーに続いて、ウェルメイドなデートホラームービーを満喫した。志の高いホンモノのエンタメホラーを観たいなら、本作を見て!約束だよ!
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