なべ

ヴィーガンズ・ハムのなべのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.9
 SNSで何度かタイトルを目にして気になってた作品。ヴィーガンとハムって単語だけでどんな話なのかあらかた見当がつく。「草ばっか食ってるヴィーガンの肉はさぞうまかろう」なんて台詞とか予想できちゃうもんね。チラ観して、おもしろそうだったらちゃんと観てみよう、そう思って観始めたら…。わはははは、あっという間に完走。これは笑った。
 他人のセックスと食い物にケチをつける奴は知能と生き方のセンスが低いと常日頃思っているので、グリーンピースやシーシェパードなどの独りよがりな活動をずっと不快に思ってた。他人に迷惑かけない範囲でやる個人の食ポリシーなら、ぜんぜんOK。どうぞご自由にってもんなのだが、“世界が終わるかどうかの瀬戸際なのだから、一切の現行の法は無効”とする過激なエコテロリストが現れると、もう心穏やかではいられない。最初は食文化の低い(おいしいものを知らない)国の新興宗教だと思っていたのだが、食文化のあるフランスでも増えてるみたいでちょっとやばいなと。
 YouTubeなんかで過激なヴィーガンを呼んで対話してるのを見かけるけど、いや、こんなのをメディアに登場させちゃダメだから。同調、追随しちゃうおかしなのが現れるから。
 だから、こいつらを笑い飛ばす、なんならそういうコミュニティに属してる人を、我に返るほど笑ってやるのが一番なんじゃないかとおもっていたら、はい、このヴィーガンズハムですよ。
 主人公夫婦の娘のカレシが自称“決して他人に強要しない”ヴィーガンなんだけど、どこがやねん!てツッコミで手が腱鞘炎になるほどクソなのよ。
 マイケル・ジャクソンはベジタリアンだったけど、マックやケンタッキーは好きだったってネタがあるけど、そういうチャーミングな感じでやって欲しいよね。自分のみが正しいってスタンスで主張を他人に強要するのはマジ勘弁してくれ。
 え、そういう輩が本編に出てくるのかって? 出てくるでてくる、そして溜飲下がるさがるw
 おもしろいのは、イラン豚の正体がわかっても、誰一人吐いたりしないところ。普通はそういうリアクション、真っ先に思いつくよね。みんな美味さは正義と思っているのか、そういう描写が一切ない。フランス人よ君らはそんな高みまでのぼりつめたのか。すごいぞ!
 まあ食べ物に限らず、選挙のシーズンになると急に電話かけて来る友だちじゃない同級生や、洗剤や浄水器を売りつけようとする迷惑な知り合いや、とってもタメになる新聞をとってとお願いしに来るご近所さんも、なんなら一緒にハムにしてほしいけど、彼らは菜食主義者じゃないから美味くないか。
 これが映画か?と問われると、ちょっと微妙なんだけど(モンティパイソンのスケッチのロングバージョンみたいなタッチ)、暇つぶしで観る分には、充分過ぎるくらいおもしろいから、観てみて!
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