ぬーたん

アルキメデスの大戦のぬーたんのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.3
久し振りに面白い邦画に出会った。原作は三田紀房の漫画。『ドラゴン桜』の漫画家だ。まだ連載中というから、映画はその一部分だけを描いたわけで原作のファンや戦艦大和のファンには不満もあるかもしれない。私は漫画未読で史実や大和についても知識は薄いので、史実を基にしたフィクションとして大いに楽しめた。天才数学者、というのは最近よく映画やドラマに登場する。でも今作はその才能を見せるだけではなく、海軍内部の争いや、設計者・数学者の合理的な思考と同時にその業のなせる野心も含めて、うまく物語を展開させていて見事だった。
先ずは最初のシーンで圧倒される。
アメリカは撃墜されてもパラシュートで脱出したパイロットを拾いに来る。あっけに取られる日本軍。こうして訓練されたパイロットは何回も飛ぶことが出来た。一方の日本は常に捨て身の戦いを強いられた。基本がもう違い過ぎた。そしてタイタニックを思い出すような沈没。ここから、その船の設計まで時を戻す。結論は出ている。いかにしてそうなったのか?
櫂直を菅田将暉。天才俳優と言われてるらしい。『帝一の國』しか観た事はないが確かに上手かった。ちょっと尖り過ぎな感じが鼻に付く役だが見事に演じていた。音楽の才能もあるらしい。
田中に柄本佑。安藤サクラの旦那さん。兄弟似てていつも間違える。この役も難しいが、その感情の変化も上手く好演。おにぎりと味噌汁を設計図の上にこぼすのではないかと冷や冷やした。早く机に置かんかい。と。
鏡子を浜辺美波。まだ19歳だって、可愛いね。
山本五十六に舘ひろし。えー、これはイメージ違うけど。こんな軽い感じでいい男だった?年齢も、舘さん70歳だけど全然見えないからいいけど。
声がめっちゃ良いのは克也さん。79歳?嘘でしょう!若いねえ。
橋爪さんは『やすらぎの刻』とは全く違う役だけど、声を張るのは同じ。少々喧しい。腹黒い役も上手い。78歳。
國村準やっぱり存在感ある。64歳。
そして、田中泯。75歳。素晴らしかった!ダンサーだったのがいつの間にか俳優として活躍。
と、何だか年齢が高い。80歳近い方も居て、日本のこれからを決めるメンバーなのに、俳優さんももう少し若い方が良かったような…。
艦長の小日向さん、軽い感じは相変わらず。66歳。
揉み手が似合いそうな関西の商人、気がいいおっちゃんの鶴瓶。
などなど、ベテラン勢がしっかりと若手2人を支えて、重厚な演技。
櫂と田中の奮闘。櫂と平山の闘い。少しづつ完成させていく過程が面白い。ミステリードラマのようだ。そしてそこからのどんでん返し。まさか、この手の映画でサスペンス的な衝撃を2回も受けるとは!
合理的な考えで結論を出しつつ、天才数学者ゆえの業で美しい物をこの目でみたいという野望も捨てられない。
老いた設計者は巧みに静かに、熱き男の前でこうべを垂れる。
駆け引きや言い訳、其々の策略。お国のために‥と。
監督は山崎貴。『永遠の0』は好きでなかったけど、これは良かった。漫画が原作の作品が多いけど、邦画は全体に漫画が多いかもしれない。
いやー、面白かった。
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