しゅん

大いなる緑の谷のしゅんのレビュー・感想・評価

大いなる緑の谷(1967年製作の映画)
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岩波ホール、ジョージア映画祭にて。1967年の白黒映画。

煙立つ大地を見下ろすのロングショットの左から右へのパンで始まるこの映画は、簡単にいえば遊牧生活を送ってきた牛飼いの男が工業化と定住化の流れに逆らい苦境に陥る話。自らの生活をどうしても変えようとしない男から離れてゆく妻、子、雇われ男、祈祷女(男と怪しい関係にある)。トラクターや牛、馬に乗っている姿を前からうつす固定のバストショットが何度か繰り返され、この作品が移動の映画であると同時に固執の映画であることを思わせる。大男の雇い主と小さい雇われ男の身長差を利用して遠くの牛の群れをフレームに収めたり、洞窟内の親子のやりとりの際の明暗差が鮮やかだったり。奇抜な技巧はないがとにかく映像が力強い。溝口健二の転落劇を女性から男性へ反転させたような趣あるかも。
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