芋けんぴ

ラストレターの芋けんぴのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.7
「主演が福山雅治級のイケおじじゃなければただのやべぇストーカーじゃん」系映画。

予告からもっと松たか子の心情に寄り添った話なのかなぁ、と思ったらがっつり男目線の話で、しかもまぁまぁわかる「この主人公は俺だー」的な作品でした。

何、世の男性作家ってみんなああなの?

自分のモヤっとしてる過去の恋を題材にデビュー作書いちゃうやつばっかなの?でもあれちょっと快感なんですね。自分の超私的な恋心を一流出版社の出版物にして、全国の書店に並べてもらえるという。言ってみればそういった想いで書かれる小説って総じて長い長い「ラブレター」ですからね。気分はいい。

◯万部出版されて何千人もの読者の手に渡ってるんだけど、本当に読んでほしいのはただ一人だけ。そして、もし読んでもらえたら、その恋はそれで終わりでいいわけですよ。読んでもらえたその証となる「感想」が貰えれば。物書きとしてのもっとも原初的な欲求は満たされる。

福山雅治演じる乙坂の欲求は一冊目を読んでもらえていたという事実でようやく満たされる。

彼の気持ちはよくわかる。

今でもずっと待ってる。「読んだよ」の一言。それが永遠に聞けないとわかったときの絶望。しかし、それがためにあの歳まで独身って……やはり福山雅治レベルのイケおじじゃないと色々アウトだな。

まるで乙坂の旅のスタンプラリーのように行く先々で出会った女性に「サインください」て頼まれるのが、いかにも女性ならではの「後腐れなさ」「記念でもって出来事を完結させる」行為みたいで、象徴的だった。松たか子も別に未練があるわけではなさそうだし、美咲にとっても綺麗な思い出ではあっても未練じゃなかったんだろうな。

あぁ、男のなんと未練がましいことよ。

過去に一冊出しただけなのに「(さも現役かのように)小説家です」とか言っちゃったり、すぐさま「売れてないですけど」て注釈入れちゃうあたり、なんか他人に思えなかった乙坂さん。

ぜひ一度飲みに行きたいまである。
芋けんぴ

芋けんぴ