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ラストレターのmuraのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.3
翌日にマラソンを走ることになっていて、穏やかな気持ちになろうと見に行ったら、そんなんじゃなかった。心を掻き乱されたわ 笑

独特な「世界」があって、そこにどうしても引き寄せられてしまう監督が僕にとって2人。それが大林宣彦と岩井俊二。岩井俊二は、なかでも『リリィ・シュシュのすべて』と『リップヴァンウィンクルの花嫁』の「世界」にハマり、離してくれない。

舞台は宮城県。冒頭、その風景が俯瞰で映しだされ、音楽が重なる。美しい。あぁ、岩井俊二の「世界」だと。

姉の未咲が死んだ。妹の裕里はそのことを知らせようと未咲の同窓会に出席。ところが未咲と勘違いされ、結局言えずじまい。そこで再会したのが鏡史郎。鏡史郎は裕里の部活の先輩でもあったが、未咲に好意を抱いていた。裕里は未咲のふりをして連絡先を交換。その後スマートフォンが壊れたこともあり、裕里は手紙を送ることに。もちろん未咲になりすまして。実は高校時代にも同じようなことが行われていて…

(以下ネタバレ気味)
岩井俊二が描く世界はどこか現実感がない。ファンタジーのようで、そこまででもなく。ここでいうと波戸場(だったかな?)という老人の存在や、トヨエツとミポリン(ラブレター!)が暮らす場所など。こういったところに徐々に引き込まれていくのかと。

鏡史郎が高校の校舎であゆみ(未咲の子)とそよか(裕里の子)に出会うシーンもそう。鏡史郎が過去の世界にタイムスリップしたよう。このとき、見ている僕も鏡史郎とともに過去にもどったような気持ちになった。そして未咲と裕里の実家を訪れる。時計の音と鈴虫の鳴き声がかすかに聞こえるなかで未咲と向き合う。

いやいや、絶対に涙が出るでしょ。鏡史郎に同化しているんだから。このあたりが本当にうまいと思った。「夢や希望に満ち溢れていたあの場所」を誰もが思い出すよう導くんだと。

最後に… 高校時代の裕里とそよかを演じた森七菜って子が地元の出身で話題に。主題歌も歌うんだけど、どこか『時をかける少女』のときの原田知世のよう。確かにプレイクの予感。
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