mura

37セカンズのmuraのレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.3
車いすの娘を抱きかかえ、服を脱がす。母も服を脱ぎ、一緒にお風呂に入る。冒頭のこのシーンが効いている。映画の世界に一気に引きこまれる。それと同時に、この映画は覚悟をもって見ないといけないと気が引きしまる。

脳性麻痺により車いすでの生活を送るユマ。漫画家のアシスタント、いや、正確にはゴーストライターをつとめる。みずからの作品を表に出したいと思いはじめたユマは、エロ漫画を描いて出版社に持ちこむ。作品を見た編集長がいうには、「セックスを経験した上で描きなさい」と。そこでユマは、相手を求めて夜の街をさまよう。そのときに出会ったのがマイ。マイとその仲間のトシがユマの生活を変えていく…

特別に見られること、扱われることは障害をもつひとにとってつらいことだと思うが、ユマも同様。でもユマの場合、とくに母親に対してそれを思う。むしろ特別視しないのは夜の街のひとたち。そこに接したとき、ユマが1つ歩みを進める。

つまりこれは、ひとりの女性の成長の物語。そしてそれは、障害者に限らず誰にも当てはまること。だからか、しだいに障害者に注目した映画との意識が薄れていく。夜の街で遊び、海までドライブし、タイに旅する姿なんて見せられるととくに。

タイを旅するシーンは…昔あの列車に乗ったなと。それを思い出した。そこであらためて思ったのは、障害があろうとあるまいと関係なく、老若男女はもちろん関係なく、人間はやっぱり冒険すべきだということ。成長するためにも。

それと…マイ(渡辺真起子)がやたらとカッコいい。こんな人間でありたい。
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