10円様

37セカンズの10円様のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
3.8
障がい者の性の問題とは何ぞや?障がい者福祉が認知されてきいる現代においてもなおタブー視されているシビアな問題。またノーマライゼーションとは何ぞや?と問いかける思いもよらぬ社会派映画でした。それもこれも主役の佳山明さんがすっごい良くて、お風呂の入り方、顔の洗い方、四つ這いで歩く姿は健常者には真似することなどできないし、恋の悩み、世界を知りたい悩みなんかも産まれた時から普通に与えられている我々には理解しがたいものなんだなと思いました。

実は私、障がい者福祉畑でずっ〜と仕事をしています。脳性麻痺の方とも接した事は何度もありますが、ユマちゃんほど知的レベルが高い方とは接した事はありません。なので、ちょっとドライな感想になってしまうのですが、私からするとユマちゃんは十分社会適合でる方です。知的には問題ないし、車椅子の自走可能。食事も自立、トイレも自立してるっぽい。入浴、更衣は一部または全解除だけど、素晴らしいのは絵と物語の巧さ!これは最強のストレングスです。障がい者としてみると割と軽度だなって思うんです。選択の意思反映も出来てるようだし。正直、普通の子と変わらないなってのが最初の印象でした。

でもただそれは、ユマちゃんより区分が高い人ばかりを観ているからであって、もし今自分が対麻痺にでもなったら世間は私をどう見るでしょう。私は世間をどうみるでしょう。きっとユマちゃんと同じ感情を抱くと思います。

昔、ある有名な先生の講演を聞きに行ったら、先生はある失敗を一つしたのだそうです。それは自分の見ている脳性麻痺の方が「結婚したいんだ」と相談を持ちかけたのに対し「それ、ドクターに聞いたの?」と返してしまった事らしいです。その人がしたいと思えばその権利を奪う事はできないはず、多分ですが、というか願望ですが、ユマちゃん並びに佳山さんには今後も素敵な人生を送ってもらいたいです。
というか、その為に私のような人間がいるわけですが…頑張る!
10円様

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