コーカサス

グリーンブックのコーカサスのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.9
時は1962年、人種差別が色濃く残るアメリカ南部を舞台に、黒人天才ピアニストのドクター・ドン・シャーリー (アリ)と、彼に雇われたイタリア系白人の運転手兼用心棒のトニー (モーテンセン)が旅をするにつれ、次第に心を通わせる友情物語だ。

人種や性格、身分や年齢の異なるふたりが、やがて強い絆で結ばれる物語は、同じくユダヤ系老婦人と黒人運転手を描いた『ドライビング Miss デイジー』を、また歯に衣着せぬトニーを知識と教養で受け止めるドンの関係性は『最強のふたり』を思わせる。

以前これらのレビューにも記したが、心温まる物語の一方で、差別に対する批判や皮肉を随所に描いていること、そして何より未だ差別は無くならない現実を見逃してはならない。

余談になるが、今年の夏にMLBクリーブランド・インディアンスは、来季からのチーム名を「ガーディアンズ」に変更することを発表した。
“インディアン”という呼び名が差別的という理由で、すでに2018年には長年チームのマスコットだった“ワフー酋長”がキャップから姿を消し、 ついに106年もの間長く親しまれた伝統あるチーム名の歴史に幕を下ろすこととなった。
個人的には、真っ赤な髭付きの筆記体でデザインされたカッコいい “Indians” のロゴや慣れ親しんだ“インディアンス”の名前がなくなるのは寂しい限りである。
しかし、その呼び名によって、ひとりでも不快に感じる者や心痛める者がいるのであれば、我々は真摯に耳を傾けなければならないし、それは“映画”という強い発信源から得た情報や観た現実に対しても、同じことが云えるだろう。

「私はいったい何者なんだ?」
「あなたは何者でもなく、人間だよ」

映画が夢物語だけにならぬよう、肌の色が違う人間たちよ、そろそろ考えようではないか。

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