ひろ

グリーンブックのひろのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5
ピーター・ファレリー監督・脚本によって製作された2018年のアメリカ映画

第91回アカデミー賞において作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞

人種差別が日常的に行われいた時代、特に差別が激しい南部にツアーに出る黒人天才ピアニストのドクター・シャーリー。教養はないが腕っぷしの強さとケムを巻くトークが武器のイタリア系アメリカ人トニー・リップ。そんな2人を描いたロード・ムービー

お偉い白人様が黒人を当たり前のように差別する映画はたくさん観てきた。元々ハリウッド映画は黒人差別当たり前の時代があったので、そういう作品は多い。近年は多民族国家としてあらゆる人種にチャンスと名声を与えないといけないので、純粋な映画賞はなくなり政治色が濃い結果になりがち。今回も人種差別を描いた映画が賞レースで勝利した。でもこの作品には温もりがある。もちろん黒人の人が観たらどう思うかは微妙だが、第三者として観たら傑作の類だ

まず監督と脚本も手掛けたピーター・ファレリー。コメディ映画の監督としてのイメージしかない彼がこんな泣ける脚本を書くなんてびっくり。もちろん監督らしいユーモアも詰まっていて笑えるシーンも多い。差別を描いた作品で笑えるシーンも加えるバランス感覚は素晴らしい。いつもは弟のボビー・ファレリーとコンビで作品を作るのに、今回はボビーの息子がドラッグで亡くなったので単独で製作。自作からはまたコンビ復活するみたいだけど、単独でオスカーとっちゃったから気まずくないかな

トニーを演じたヴィゴ・モーテンセン。何度も役の依頼を断ったのに説得され主演。役のために20kg太った役者魂はすごい。世界中の女性が夢中になったアラゴルンの姿は跡形もなく。還暦のおっさんとして正しい見た目に衝撃を受ける。ぶっきらぼうだけどいい奴というよくある役柄だけど、この物語において最高の存在となっている

ドクター・シャーリー役でオスカーを受賞したマハーシャラ・アリ。2度目の受賞でノリにのっているアリ。孤高の天才ぶりが少し笑っちゃうシーンも多い中、差別に対峙するシャーリーの強さと弱さを豊かな表現力で見せてくれる。ケンタのチキンを食べるシーンはなかなか印象的

いい奴だけど偏見もあるトニーと世間ずれしながらも差別に立ち向かうシャーリー。こんなデコボココンビが少しずつ繋がっていく物語。少しずつ進んでいくのを感じやすいからロード・ムービーが好きだ。少しずつ進んでいく2人の関係性。全てはラストに向けた伏線。涙腺が決壊。久しぶりの気持ちいい涙。スパイク・リー監督は文句を言ってたけど素敵な作品だった
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