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マダムのおかしな晩餐会のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

マダムのおかしな晩餐会(2016年製作の映画)
3.5
「スモーク*1」で孤独な中年男の色気だだもれのハーヴェイ・カイテル&長身痩躯にきらめくアッシュブロンドのトニ・コレット*2が競演するとあって楽しみにしておりました。なんてテンポの良い会話劇…!

そこそこゴージャスなセレブたちの中に突如放り込まれる羽目になったメイドをめぐる恋と欲と嫉妬の話、というわけで会話の端々にはキツめの皮肉や言葉遊びがてんこ盛り。登場人物全員がどこかしらちょっと迂闊で浅薄で、にもかかわらず何とも憎めないのは、予想外の事態に慌てふためいたり嫉妬に我を忘れたり浮かれて調子に乗っちゃったりと素直かつ正直に振る舞っているためでしょうか。欲望に忠実というか愛に生きるというか切り替えが早いというか、見ていてやたらと小気味よいのです。その人間くささでスノッブさが中和されてる感、すごくある。

女主人アンがアートディーラーの英国紳士デイヴィッドに真実を告げるところ、ボブの息子スティーヴンがアンとマリアをモデルに書いた小説が未完であるらしい件、マリアがメイドの職を手放したその後など、観客に解釈を委ねる演出はいかにも大人向けのコメディといった趣がありました。ここを余韻とするか消化不良とするかで好みがだいぶ分かれてきそう。

それにつけてもトニ・コレットの、あの堂々たる佇まいよ。リッチな年増男の後妻に収まりやりたい放題ゴージャスな日々を送る女の傲慢さやいけすかなさ、リベラルを装いながらも隠しきれない上から目線、女主人としての尊厳と自意識、極上の美貌やスタイルや若さを失いつつある恐れそして嫉妬。これら全てがひとりの人格に違和感なく混在しているという説得力が素晴らしかったです。鼻持ちならないだけじゃなく、セックスレスに悩んでうっかりよその男になびいてしまいそうになる弱さも併せ持つ女、端的に言ってめちゃエロい。たまらん。

御歳80(!)のハーヴェイ・カイテルはまだまだお元気そうで何よりだし、マリア役のロッシ・デ・パルマはトニ・コレットのスレンダーな肢体と対をなす豊満なボディラインが最高に魅力的だったし、すべての騒動の発端たるスティーヴン役のトム・ヒューズはびっくりするほど色男でした。わたしの知る限りこの世で最も美しい男子と言えば西のノア・サーベトラ*3そして東の高良健吾なんですけども*4、ここに名を連ねる存在が遂に現れたかという気がしています。何から何まで眼福でした。

1:わたしのオールタイムベスト3傑に君臨し続けている作品です
*2:「マイ・ベスト・フレンド」で病に倒れる役回りが痛々しかったので元気な演技が観られて嬉しい…!
*3:「エゴン・シーレ 死と乙女」
*4:性の対象とかではなく、芸術品として跪いてその美しさを崇めたい
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