ウィル・スミスのギャラより高い金額で、若ウィル・スミスを創るという試みも異常なのですが、その今スミスと若スミスとのアクションを120fps/3D/4k 撮影で撮りヌルヌル化させるという試みも狂っている、素晴らしいアン・リーの「映画の神」への探求映画『ジェミニマン』。(しかもこの撮影方式が現在の上映技術では再現できないというトンデモ感ももはや好ましいです)
動画でのレビューもしました
https://youtu.be/gbmm-6zV-Lw
CGで作られたウィル・スミスの方が、当時のウィル・スミスより演技が上手い!という冗談はされおいて……
人類未体験劇場での鑑賞必至な映像はさておいて、自身のクローンと闘うという90年代的プロットがやはり「父親三部作」のアン・リーの映画になる。父親に虐待されていた過去をもつ今スミスと、『ハンク』の主人公同様、父親に創られたフランケンシュタイン≒若スミス。両者の抑圧的な父性への反発の物語を描き、そして今スミスによって若スミスを“導く”展開は、イノセンスを守る、『ライフ・オブ・パイ』で島に消えた「虎」を取り戻す行為に重なります。
これぞ作家性、どんな題材でもにじみ出る映像作家アン・リーの魂。