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ジェミニマンのsanbonのレビュー・感想・評価

ジェミニマン(2019年製作の映画)
3.3
白眉ですらありきたりに。

今作最大の見どころといえば、なんといってもフルCGで蘇らせた20代の若き「ウィル・スミス」と現在のウィルとの共演であろう。

確かにあれだけの精巧なCGは、現行の作品と比べても一段上のレベルにあると感じたし、それを全編に渡ってごまかしもなく登場させた気概は相当のものだ。

しかも、今の技術でもナチュラルな人の表情というのは中々に作り出すのは難しいのだが、特に若きウィル=「ジュニア」の泣きのシーン等は、見事に違和感を感じさせない自然な作り込みで素直に見惚れてしまった程だし、生身でない強みとして人間離れした身のこなしを演出に取り入れたりと、CGである事を最大限活かす画作りは楽しめる部分も多かった。

しかし、このCGで若返った演者を登場させる技術を、僕はつい先日かなりタイムリーに観てしまったばかりなのだ。

そう、それは「ターミネーター:ニューフェイト」の冒頭「サラ」と「ジョン」がバカンス先で「T-800」に襲撃されるシーンでの出来事である。

映画のはじめに差し込まれる制作会社のプロモーションの中に「SKY DANCE」の名を今作にも発見した時から微かに嫌な予感はしていたのだ。

しかも、ターミネーターでそのシーンを観た時のインパクトは確かに大きく、今の技術の進歩をダイレクトに実感したものだから、きっと今作が観る順番として先であれば、評価もわずかながら上がっていたかもしれない。

しかし、これ程までにどちらも全く同じ技術を使った映像表現であると、タイミングの問題もありはするだろうが、もはや既視感しかなくなってしまい、今作最大にして最初で最後の驚きは、効果を発揮しないままで見慣れてしまった。

そして、今作における驚きは前述した通り、このフルCGのウィルが最初で最後であるのだからいたたまれないのだ。

それ程までにストーリーはおざなりであり、唯一の見どころを失った状態では退屈な時間に耐え凌ぐ他なかった。

今作も含め、近年中国資本のハリウッド進出には目を見張るものがあるが、共通して言える事は脚本が伴っていない事だろう。

今作の脚本家が手掛けた過去作を見ても、そこまで悪い布陣ではないと思うのだが、それでも良くならない理由はやはりスポンサー側の注文の質にあるのだろうか。

また、今作とターミネーターはレンタル時期もそうなのだが、公開時期に関しても本当に近々であり、同じ技術を用いている点で言えば互いに潰し合っているとも見てとれる状態である。

こういった場合、普通であれば公開日をずらしたりなどしてバッティングを極力避けるものだが、そういった部分でも立ち回りが上手いとは言えなかった。

金に物を言わせて、大物であるウィル・スミスと、香港系のハリウッドスター「ヴェネディクト・ウォン」を起用出来た時点で製作側としては万々歳なのだろうが、パクリ文化から脱却してオリジナリティをそろそろいい加減学ばないと、エンタメ業界においてこの先の更なる栄華は難しいのではないだろうか。
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