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ホワイト・クロウ 伝説のダンサーのメルのレビュー・感想・評価

3.9
旧ソ連から亡命した天才的なバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの半生。

ヌレエフ役は現役のプリンシパル ということでバレエも見応えあるし、目元や雰囲気が似ていて全く違和感なく観た。

バレエ団の仲間として出ているセルゲイ・ポルーニンのジャンプと回転が見られるのはもう一つの楽しみ。プライベートではポルーニンもパパになりましたね。

美術館で絵画や肉体美の彫刻を鑑賞するヌレエフと鍛え抜かれた彼の肉体との対比。

エルミタージュ美術館の外にある天空を支えるアトラス像の足、昔ガイドさんにそれを触ると幸せになれると言われたことを思い出した。彼もレッスンで疲れた自分の足を労るように像の足をじっくり触ってました。

フランス公演で知り合う振付師にラファエル・ペルソナが出ていたことも嬉しかった。若い頃はアラン・ドロンの再来とも言われてましたが最近はあまり見なくなって残念。

亡命を決意し、実行するまでの空港での経緯は緊迫感あって目を見張ってしまう。ここに幼い頃の民族舞踊の先生から「ひとりで出来ないとね、お母さんは外に出ていてください」と言われる場面を持って来ることで、23歳の彼が自分の意思で祖国には帰れないという道を選んだことを強調する。このシーンは感動的でした。

ここからラストに向けて流れるバイオリンの音が美しくそして力強い。

幼い頃母親が早朝に雪の中買い物に出かけて行くシーン、それを窓から見つめるヌレエフ…それだけで暮らしぶりと母親の愛が伝わって来る。レイフ・ファインズ監督作を観たのは初めてですが、これは色々な点でとても丁寧に作られていると思います。
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