うっちー

メランコリックのうっちーのレビュー・感想・評価

メランコリック(2018年製作の映画)
3.9
 気になっていたが見逃していた作品。いやぁ、これも予想外の展開でとても面白かった。そんなところで終わっていいの?とも思うが、そうか、これでいいんだ、とも思うし。とにかくとってもブラックなのに鑑賞後がしごく爽やかなのだ。とっても不思議。

 実家暮らしの和彦は、東大卒なのに仕事もしない、絵に描いたようなニート。近所の銭湯で高校時代の同級生に出会い、彼女目当てでその銭湯のアルバイトを始める。ある夜、その銭湯の灯りを不審に思い、裏口から風呂場を覗いたところ、恐ろしい光景を目にしてしまう。思わぬ偶然から悪行の手下となって働くことになる和彦。アルバイトの同僚、松本や同級生の百合との関係を挟みながら、和彦の変化(成長とも?)を軸に、クライムストーリーが展開してゆく。
 この銭湯で起きていることを冷静に考えれば、もっとサスペンス的なムードになるはずが、和彦や松本、店長や和彦の両親ららの淡々とした様子が、なんとも不思議なおかしみを醸し出す。起きていること、相手の言葉をすんなり受け入れたり、邪推しなければ、人間の行いや生活はごくごくシンプルなのだと思い至らせる。
 そんな飄々とした彼らが、うちに秘めた信念や哲学みたいなものをさらけ出し、何歩か踏みこむ、あるいはアクセルを踏む瞬間に、ちょっとジーンとさせられた。そうか、この人にはこんな面があったんだ、と。なので、意外な展開の驚き、だけで終わらない不思議な感情をもよおさせる作品。軽くはないけれど、充分笑えるし、冷や冷するし、ちょっと熱くなる。 
 こんな映画、なかなかない。とても魅力的だと思った。