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さよなら、退屈なレオニーのろのレビュー・感想・評価

さよなら、退屈なレオニー(2018年製作の映画)
5.0

労働組合のリーダーだった父はこの町を去った。
ここに住む人は皆ゾンビのようで、私は大嫌いだった。

やりたいことなんて何もない。
将来なんてどうだっていいや。
そんなレオニーの17歳の夏。


レオニーは人生を諦めているわけでも、他者を拒絶しているわけでもなかった。
ただ将来ばかり気にする母親とは分かり合えないし、自分の意見を主張できるクラスメイトとは生きている世界が違うような気がする。
だからこそ遠くでトレイラー暮らしをするお父さんに、実家の地下室でギター講師をするスティーブに、なんとなく近いものを感じた。
レオニーもお父さんもスティーブも孤独だから。
生活を変えたくてもどうしようもないから。
これから先、どうなっちゃうんだろうね。
そういう不安ははじめからなかったことにしよう。


ライトがチカチカとホールを照らす。
アップテンポな音楽に身を任せ、晴れ着を纏った同級生たちは踊る。
そんな浮かれた卒業パーティを、黒いライダースのレオニーが裂いていく。

夜の野球場に、エレキギターの唸り声。
潔く潰れ割れていく義父の車。
最初に乗りこんだバスとはまた違う味を噛みしめている。





( ..)φ

しかたなくバイトの世話を義父に頼む場面がある。
義父はストライキをした父をバカにし、母の恋人になった。
しかも紹介された市役所の役人は、かつて父を裏切った人物だった。
そういうありふれた不条理の匂いがこの映画から漂ってくる。
ろ