茶一郎

アポストル 復讐の掟の茶一郎のレビュー・感想・評価

アポストル 復讐の掟(2018年製作の映画)
3.7
 全世界を驚愕させ、もうアクション映画のエポックな一本として数えても全く問題ない『ザ・レイド』の生みの親ギャレス・エヴァンス監督による新作『アポストル 復讐の掟』は、アメリカ製、かつNetflixプレゼンツのサスペンススリラーです。
 
 物語は、孤島を拠点とするカルト教団に妹を囚われた主人公(ダン・スティーブンス)がカルトの信者になりすまして潜入するという「囮操作モノ」。やはり同ジャンルである監督前作『ザ・レイド GOKUDO』には無かった「バレるか・バレないか」サスペンスと、危険すぎる宗教組織のゴタゴタや、危険な思想をギャレス監督お得意の痛ーい暴力描写として映像化したスリラーの2つがこの『アポストル』の軸になっていました。

 何よりも予告編でも見られた「ドリル拷問器具」、また終盤に登場する「最悪最恐の美顔ローラー」と、とにかく本作は拷問器具(撮り方も含めて)がフレッシュ。その拷問(処刑)器具に加え、監督の「暴力をどこまで見せるか」という緩急ある見せ方もやはり巧みで、この暴力描写だけで元を取れたという感覚があります。

 しかしながらその暴力描写と新鮮な器具以外は何とも微妙で、『ウィッカーマン』や近作では『サクラメント 死の楽園』的、危険な土着信仰を信じるカルト教団への侵入操作モノとしては、カルト教団側の「変態っぷり」への振り切りが甘いため、この『アポストル』は物足りなさがありました。
 また実写版『美女と野獣』の「野獣」でお馴染み、妹を奪還しようとするキリスト教徒の主人公演じたダン・スティーブンは、『ザ・ゲスト』ほど強くなく、『レギオン』ばりにずっと変顔や叫んでいる受け身のキャラクターですが、それも良くない。いっその事、抑圧された主人公が宗教倫理を超えて、暴力を大爆発させる所が見たかったです。

 とは言え、物語のジャンルが上述の粗筋を超えて超自然的な方向へと動いた瞬間には、思わず姿勢も前のめりになります。『ウィッカーマン』のドンデン返しにもう一つ、ひねりを加え最後には入り口から予想ができなかった出口で降ろされる。変態島を描く作品では語る口も変態でなければなりません。
茶一郎

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