ぐち

シネマ歌舞伎 野田版 桜の森の満開の下のぐちのレビュー・感想・評価

4.0
歌舞伎は初めて見るし坂口安吾は読んだことないしで、こんな無教養な人間が下調べもせず見るものではないかもしれない…と席に着いてから急に不安になったんだけど

おっっもしろかった!!!!!!

え、歌舞伎ってこんなに見やすいの?
もっと何言ってるのか理解できないかと思ってたしこんなに笑えるシーンがいっぱいあるとも思ってなかった。
普段は歌舞伎の演出家じゃない方の作品だし、もちろんこれが歌舞伎のスタンダードだとは思わないけど。
どこまで見やすく作ってたのかな…喋り方とかは他の歌舞伎もこういう感じなんだろうか。古典も観てみたくなった。

人間の目には観えなくても存在してて、大昔は共存してて、演目開始の時には人間界と交わらないように封じられている『鬼』の存在。それを人間が自分の欲望のために利用して、その後には存在自体を無いものとする。そしたら今度は逆に不安になる。一切鬼のいない世の中というものに人は安定を見出す訳ではないらしい。
人は鬼を求める。ついには鬼を勝手に仕立て上げ、追い立て、討ち果たすことで禊と成す。
「鬼を討ったと思ったら人だった!」
鬼を討った場所が国境となる。
国はこうして作られる。
歴史も伝統も新しく作り治されそれが千年続いてるかのように装う

「鬼」の扱いが印象的に人の世を皮肉っている。


過剰な野心のない、実直な耳男がその性格のまま愚直に陥れられ 陥れた方には特に咎めもない展開は、理不尽だけれどリアルで風刺的だった。
耳男の、過剰な野心はないけど聖人君子でないところも良かったな。人並みに承認欲求があったり騙ったり呪ったりするっていう「普通の男」
まあ夜長姫とのことを考えると突き詰めれば耳男も全然常人とは違うんだけど…
夜長姫と坂道を全力で落ちて行こうと駆け出すシーンが素敵だった。
夜長姫に主導権を握り治されるところも含めて笑
ぐち

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