むらむら

クワイエット・プレイス 破られた沈黙のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
「音を立てたら、即死」

のコピーで大ヒットした作品の続編。

第一作目は、初デートでオナラをしてしまった女の子の話かな?

と、ウキウキで鑑賞した俺なのだが、メッチャ怖くてマジ泣き。「オナラする女子高生はどこじゃー!」とクレームする間もなく、作品世界に没入してしまった。

当時、「デス・ストランディング」というゲームにハマってたこともあり、大変楽しませてもらった記憶がある。

そんな期待度マックスで臨んだ第二作……。

うむむ……なんというか、微妙。

全体的には満足の行く出来なのだが、細かいところで気になる部分が散見されたので、主要登場人物ごとに、俺が気になったポイントを列挙させてもらう。

■アボット一家

この作品の主人公であるエミリー・ブラント率いるアボット一家。前作でも、音を立てちゃダメ、って状況なのに赤ちゃん産んだりと、自分勝手な行動が目についたが、今回は赤ちゃん含む一家4人総出で自分勝手な行動を取りまくる。

・出産直後なのに子連れでウロウロするエミリー・ブラント

・エメットさん(後述)が一人で頑張って生活してた廃工場に居座る図々しいアボット一家。エメットさん「食料も何もないのに……」って迷惑がってたよね?

・「海辺の島に行ったら助かる」と自分勝手な理論を振りかざして、勝手に出ていってエメットさんを巻き添えにするスーザン・ボイル似の娘。お前、前作でも家出してたよね!? 協調性ないんか?

・「鉄工場でジッとしてろ」と言われてるのに、ブラブラ外出してエイリアンをおびき寄せてしまう軟弱な息子。姉ちゃんに次いで、弟まで身勝手な行動するこの一家、躾はどうなってんの?

・極めつけは赤ちゃん。ここまで自分勝手な一家なので、映画的には最悪のタイミングで泣き喚くハズ……と思いきや、案外静か。ほぼ置物状態。お前、脈絡なく泣き叫んで、主人公たちをピンチに陥れるためにいるんだよ!? 分かってるよね!? 空気読んでどーすんの!

と、一家全員、完全にアスペルガー症候群。

フォローしているYOKさんのレビューに

「父ちゃんを前作で失ったことがこんなにも悪影響を及ぼすとは……」

と書いてあったが、完全同意。このアボット一家は、父ちゃん亡きあと、一家として崩壊してる。

こんな一家に出会ってしまったエメットさんが不憫で仕方なかった。

■エメットさん

と、そんなサイコパス一家にパシリ感覚で使われる、イケオジのエメットさん。演じるのはキリアン・マーフィー。今作で一番活躍する人物。

アボット家と再会した途端、エミリー・ブラントに

「あんた、知り合いの癖に、ウチの一家、助けに来なかったやん」

ってマウント取られて、そのあとは一家に翻弄されっぱなし。一人静かに暮らしていたのを滅茶苦茶にされても耐えるエメットさん、マジ尊敬っす。

パシリなので、エミリー・ブラントとのロマンスなんて一ミリと存在するわけもなく、ボロクソ言われて罪悪感を植え付けられ、

「あんた、娘、探しにいってよ」

と、家出したスーザン・ボイル(娘)を探しに行かされるハメに。

だが、ここは一人暮らしを満喫してただけあって、基礎能力の高いエメットさん。スーザン・ボイルを探し出して、さらには島に渡るためのボート乗り場まで発見する有能っぷりを見せつける。

それなのに、スーザン・ボイルが持つ、「エイリアンを撃退できる不協和音を発生させられる補聴器」には指一本触れさせてもらえない。

こんな状況じゃなかったら、エメットさん、スーザン・ボイルを大声で怒鳴りつけてもいいくらいだと思うよ!

■エイリアン

最後はエイリアン。

前作では正体不明のエイリアンという印象が強かったが、今回は初っ端からガンガン顔出ししまくる目立ちたがりやさん。

モブキャラは瞬殺するクセに、主人公一家にはまず真正面から

「では、これから襲わせて頂きます」

とばかりに姿を表してから襲い始める忖度っぷり。お前ら、前作ではもっと見境い無かったよね?

見た目がヴェノムの不良品にしか見えないし、動きもどこか江頭2:50を彷彿とさせるので、前作に比べ、怖さが半減してる。

加えて、「泳げない」とか「補聴器の不協和音で撃退できる」とか、弱点も明らかになってるし。あ、この「不協和音を発生させる」補聴器の設定に、「人造人間キカイダー」の「ギルの笛」を思い出した人は、そろそろ可聴領域が狭まって死期が近付いてる頃だと思います。

それにしても「泳げないエイリアン」って、敵としては弱くないか!? ちょっとネタバレになるけど、泳げないエイリアンが船を操舵してる姿を想像して笑ってしまった。

■まとめ

ということで、徹底的に音で攻めた前作に比べると、今回はみんな「破られた沈黙」どころの騒ぎじゃないくらい、ペチャクチャ喋ってるし、エイリアンも結構仕留めてるし、ハラハラ・ドキドキ感は減ったんじゃないかなー。

前作で「音を立てたら、即死」で出来そうなアイデアをやり切ったぶん、それが足枷になっちゃった気もした。

あ、そうそう。足枷で思い出したのだが、「裸足で歩く」って設定。

前作では

「家の周りを砂で固めて、その上を裸足で歩いたら音が出ない」

ってことだったと思うんだけど、今作は、ジャングルの道なき道を歩くのに、ずーっと裸足。案の定ケガとかしちゃってるし、なんで道なき道まで、裸足で歩いてんだろ、ってのは気になった。なんで裸足で歩いてたんだろ? 裸足が癖になっちゃったの? デヴィッド・バーンに影響されたの? うーん、どなたか理由分かったら教えてください。

それ以上に、メッチャ気になったのが、「エイリアンは泳げない」のに、海に逃げ出さない港にいる連中。うーん、みんな死にたいのかな?

長々と、辛口なコメントをしてしまい、申し訳ない。追体験型ホラーとしては、前に観た「ファーザー」のほうが圧倒的に怖かった。

ただ、じゃあこの作品は駄作なのか、っていうと、そういうわけでもなく、雰囲気がめっちゃいいんだよね。ポストアポカリプトの世界を放浪する設定、めっちゃ俺の大好きな「ラスト・オブ・アス」ってゲームとかぶる。そういえば、お父さん役の人も「ラスト・オブ・アス」の主人公ジョエルにクリソツだったし。「ラスト・オブ・アス」シリーズを映像化するなら、ぜひこの監督にやってほしいです。ゲームといえば「オペレーション:タンゴ」ってゲームをやっているのだが、どなたかやってる人いないですかね……。

ところで夜中に大音量でAVを観ていると、隣の部屋からドンドンと音が聞こえてくるのだが、俺の隣の部屋にもエイリアンが住んでるってことだろうか。恐ろしい話である。
むらむら

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