るる

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

良質なミステリ映画、アガサ・クリスティっぽくて楽しんだ。

意味深に映り込むナイフ。映画らしい伏線の張り方、世界観の醸成の仕方で良かった。

主人公が見ていたドラマは『ジェシカおばさんの事件簿』? なんにせよ、この感じのミステリね、OKOK、と伝わってきたので良かった。

ポワロを思わせるクセのある探偵、嘘をつくと吐いてしまう特殊能力持ちの女の子、腹立たしい家族たち、定番なのに新しさがあったのは、移民である彼女が主人公で、彼女の視点で進行したからだと思う。昔ながらのミステリで、疑いをかけられる哀れな容疑者のひとり、もしくは背景として登場する、移民の使用人、そこにスポットを当てたあたり、2010年台のアメリカ映画だなと感心した。刑事の存在感も良かったな。

わりと早い段階で、解毒剤を隠したのは誰なんだろう、そいつが犯人のはず、と念頭において見ていて、彼女に近付く彼が犯人なんだろうな、どうやって、と漠然と考えていたんだけど、椅子に座らされたハウスキーパーの彼女が出てきてから推理モードが中断してしまって、最後にしっかり謎解きに呑まれる、そうそう、起承転結の転で起きる急展開のせいで自分なりの謎解きがどうでもよくなってしまう、推理小説読んでてもこうなりがちなんだよな。。と再確認するなどした、

推理要素のある作品は、その急展開は必要だったか、謎解き前の盛り上がりとして機能した後、振り返ったときにスジとして齟齬はないか、と考えてしまう、そういう意味で、はたして彼女を殺す必要あった? 作劇上の都合では?と疑問ではあったんだけど。そもそも死ぬ必要のない人間の自殺、間違いの悲劇から始まってるからこそ。

まあでも、ちょうどいい、良質なミステリだった。

eat shit! クソくらえ!の連呼には苦笑した、

あ、それから、字幕でパヨクという言葉を見て苦笑した、パヨクな、一昨年くらいの時点で流行語認定してネトウヨと同レベルの低俗なスラング、侮蔑語・罵倒語の類としてリベラルから切り離しておくべきだったと思う、もう色々と手遅れ、ネットのソレは区別がつかなくなってきたよな、なぜならリベラルは保守に比べて抱えるべきイシューが常に増えていくので仲間割れを繰り返す宿命だから…ネットで質の低い議論を繰り返すうちに劣化していくのは当然…なんてことまで思った。

ダニエル・クレイグの独特の色気のある変人演技も良かったけど、クリス・エヴァンスのチャーミングさ、騙されてもいい、彼女と仲良しであってくれ、このふたりをいつまでも見ていたい、と願ってしまう魅力があって良かった、もっと色々演じてみてほしい。ちょうど良かった。

2021.1.23.
真相に気付いたハーランは瓶の入れ替えを誤魔化して遺産を相続する彼女と共闘する道もあったのにリスクを犯してフランを殺害したんだよな、彼がしたたかになりきれなかった背景について、もうちょっと説得力がほしかったかも。

しみじみとラストシーンがよい。
るる

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