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ラ・ヨローナ~泣く女~の消費者のレビュー・感想・評価

ラ・ヨローナ~泣く女~(2019年製作の映画)
3.0
・あらすじ
遡ること1673年のメキシコ
とある村にいた美人で評判の女性
彼女は村にやってきた牧場主の男性と恋に落ち、2人の子をもうけた
しかし幸せ一色の生活は間も無く崩れてしまう
夫が若い女と浮気したのだ
激昂した女性は夫の大事な物を奪おうと2人の息子を川に溺れさせ殺してしまう
その直後、自分のした事の大きさから自責の念に駆られて彼女は自らも入水自殺
以来、霊と化した女性はラ・ヨローナ(泣く女)と呼ばれる様になり、夜になると子供をさらいに来るという伝説が生まれた
そして時は経って1973年
児童相談所でケースワーカーとして働きながらシングルマザーとして息子と娘を大事に育ててきた女性、アンナ
ある日、彼女が担当してきた一家、アルバレス家の息子であるトマスとカルロスの無断欠席が続いているという一方が相談所に入る
その報せを聞いたアンナが警官と共にアルバレス家のシングルマザー、パトリシアに状況の確認をしようと家を訪ねるとそこには2人の息子達が見当たらず、パトリシアもアンナを門前払いにしたがっている様子だった
そんな彼女を意に介さず家を探し回るアンナ
すると封鎖された怪しいクローゼットを発見、「開けるな」と叫ぶパトリシアの静止を振り払いドアを開けるとその中に2人はいた
だが息子達も母、パトリシアも得体の知れない存在に怯える様子
一旦2人を福祉施設に預けるアンナ
その翌日、彼女の元に掛かった1つの電話
何と少年2人は溺死したのだという
後日、自分の子供2人を連れて葬儀に向かったアンナ
そこで息子、クリスはラ・ヨローナと出会ってしまう
やがて彼女の怨念は家族全員に降りかかっていき…
という心霊ホラー作品

・感想
人気ホラーシリーズ、「死霊館」ユニバースの6作目でスピンオフ作品としては4本目にあたる今作
話の軸となる“ラ・ヨローナ”は実際にメキシコで語り継がれる一種の怪談であり、その事から実話ベースを期待していたものの鑑賞してみると今作もどうやらフィクションっぽい…
何度でも言うけどこのシリーズの良さは実話ベースである事が最も大きいのでやっぱりそこは残念

シリーズの過去作品との繋がりとしては「アナベル」でアナベル人形を清める為にジョンとミアのフォーム夫妻から預かって教会に持ち帰ろうとした際に悪魔の攻撃を受けた神父、ペレズが今作の主人公であるアンナが最初に相談した相手という事だけでそこがちょっと気になった
登場人物や出来事を申し訳程度にちょろっと繋げるだけの物を“ユニバース”と呼べるんだろうか、と…

そして今作だけに関する感想について
実際に存在する霊の伝承を題材としているので多少は仕方ないもののラ・ヨローナの生前のエピソードやそれを理由に子供達をさらい続けている、というのがただただ理不尽なこと
自分の息子2人を連れ去られ殺された、とはいえ何も知らず封を解いてしまったアンナに対してのパトリシアの行動があまりにも身勝手なこと
この2つがどうしても気になった
子を失う、というのは確かに悲劇なんだけど何の説明もなくアンナがラ・ヨローナの事を知る訳がないのに恨みを抱いて彼女の子供2人と引き換えに取り戻そう、というのはさすがにちょっと…
本作と一緒に観た黒沢清と伊丹十三による作品「スウィートホーム」とも偶然、設定が被る部分があったせいで余計にそう感じた

他にも本シリーズではあるあるなので最早期待する方が間違ってる気すらしてきたけどやっぱり心霊描写が全体的にヌルい…
ラ・ヨローナのビジュアルもだけど攻防の描写もポルターガイストや肉弾戦に近い物などでほとんど構成されているのもありがちな心霊ホラー過ぎて…

あとは一家を救う様に頼まれた元聖職者で呪術医のラファエルのキャラクター性も印象的な部分があまり無く、悪霊を祓う過程でアンナの子供達を一度は囮にしていたのもこれまでとは違って救う人間が手段を選ばない感じで「う〜ん…」となった
キリスト教ゴリ押し過ぎる世界観や倫理観に走られるのもそれはそれで嫌だけどシリーズに通底するキリスト教信仰を絶対的正義として扱うのならソレは矛盾を孕む気がするんだよなぁ…

とまぁ色々と引っかかる部分があったけど何よりシリーズ全体としてもう少し心霊描写や霊の引き起こす展開にバリエーションが無さ過ぎるのが1番の欠点かもしれない
映像作品における暴力や殺人は言ってしまえば大喜利みたいな物だし…
そこだけでも毎回新鮮味を味わいたいところ
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