噛む力がまるでない

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りの噛む力がまるでないのレビュー・感想・評価

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 テーブルトークRPGを原作としたファンタジーアクションである。

 原作のゲームのことは知らなかったし、予告を見た限りファンタジー世界の賞金稼ぎものなのかなと思っていたら、実際見てみるとケイパーものの軌道が敷かれたスカッとする楽しい犯罪映画だった。冒険やファンタジーの要素はあるものの、やっていることは『オーシャンズ11』や『グランド・イリュージョン』などと同じで、盗みそのものよりも盗賊団の一味がどのくらい魅力的に描けているかがキモになる。そして本作はエドガン(クリス・パイン)をはじめとしたアウトローたちの活躍がとても楽しい。

 とにかくクリス・パインの快男児っぷりが炸裂していて、ほんとにナイスな安心感のある俳優である。エドガンは盗賊というよりは吟遊詩人みたいな雰囲気で、武器は持たず知恵とユーモアで状況をかいくぐっていくキャラクターというだけでも感じが良いのに、クリスがより明るく親しみやすいものにしている。相棒のホルガ(ミシェル・ロドリゲス)もミシェルはこういう強い女いったい何度目なんだよというツッコミはあるが、さすがの安定感だし、サイモン(ジャスティス・スミス)やドリック(ソフィア・リリス)たちにも見せ場があって、一人ひとりがしっかり光っている。それでいて掛け合いがすごく面白くて、見ていて何度も笑ってしまった。2時間ちょっとの間でこんなに愛着の湧くチームを見られただけでも今日来て良かったなーと思える。
 ファンタジー世界のお話だが、モンスターとかド派手な要素はけっこう控えめでキャラクターをきちんと見せることに重点を置いており、まんをじして出てきたドラゴンは太っていて動きが鈍いとか、面白くかつインパクトがある。実は上手にメリハリをつけているんじゃないかと感心したのだが、中盤で「○○をするために○○へ行って」みたいな展開が続いたのはちょっとまどろっこしいと思った。

 吹き替え版に関しては、プロパーの声優で固められた大変充実したプロダクションでオススメだ。ドリックの南沙良だけは本業ではないので演技の迫力に欠けるところはあるが、そこまで違和感はなく、共演者となかなかうまく交ざっていると思う。あと、武内駿輔はクリス・パインをあてるのははじめてなのに異常にはまっていて、小野大輔を彷彿とさせつつエドガンをしっかり笑えるキャラクターに仕上げている。まだ25歳であの演技力というのは驚異的とすら思える。