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ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒のdenizのレビュー・感想・評価

3.8
「あなたが見た広い世界を忘れないで。」

スタジオライカの長編映画第5弾。
とうとうライカは水中戦までもモノにしたのか…!
という、初っ端での驚愕のネッシー(!)との闘いは、あくまで胸躍る冒険譚のプロローグ。
ライカの引き出しはもっともっと多彩で豊か。
水溜まりに映る風景、寒夜の湖、太陽の光に透ける鳥の翼、水飛沫、生命の躍動。
なにもかも実写と紛うほどのクォリティ。
だが今作なによりも素晴らしく感じたのは、キャラクターの感情の機微や会話の間。
過去作の積み重ねを受け、脚本が一皮剥けた趣きだ。

自称「神話と怪獣研究の第一人者」である、主人公サー・ライオネル卿はもはやヒュー・ジャックマン本人のアニメ化といっても過言ではないほどの出来。飄々として憎めない。どことなくP.T.バーナムが脳裏をよぎる。
そしてライオネル卿が探し求める人類の祖先、"ミッシング・リンク"であるスーザンが、誰よりも人間らしくてチャーミング。 
終盤にはトムクルーズばりの空中戦もあり、エンドクレジットのみならず、ライカのロゴアニメまでお洒落。
ライカ作品独特の"不気味さ"も今回はそっと鳴りを潜め、アドベンチャーに舵を振り切っている。
出会い、友情、家族、信念、そして進化。
狭い世界の中で自分の居場所を見つけようともがくライオネルと、自分の居場所を見つけるためにまだ見ぬ新しい世界を欲したスーザン。
ひとりと一匹が出会って、ようやく世界は輝きはじめた。
やがて"ストップモーションの"という形容詞すら必要なくなりそうな、ライカ渾身の一作。
残念ながら吹替はなく、キャラのビジュアルがあまり子供受けしない感はありますが💦ご家族でのお家鑑賞にも心よりおすすめです。
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