Aya

ザ・ライダーのAyaのレビュー・感想・評価

ザ・ライダー(2017年製作の映画)
3.7
#twcn

クロエ・ジャオがすべてのロデオボーイ達へ綴った至極のラブレター。

そもそも「馬ロデオ」を知らんかった・・・。

あらくれ馬に乗って大会に出た際の落馬で頭を20針ほど縫う怪我をしたブレイディ(正確にはあのホチキスみたいなバン!て留めるやつ)。

病院を抜け出し、家に戻っちゃうおバカさんなブレイディだが案の定吐き気と痛み、そして右手に大きな後遺症が残ってしまっていた。

これアレかも。
自営業だし保険とか入ってなさそうだから金銭的に帰ってきたのかも・・・。

ブレイディは家族や友達からの心配や揶揄をよそに次のロデオ大会を目指す。

軽い知的障害を持つ妹と、大会に出れない息子をディスる馬場オーナーの父、そして数年前に亡くなった母。
友達はカウボーイばかり。

そして同じロデオ仲間で落馬事故により全身麻痺になってしまった伝説のブルボーイ、レインが象徴的だ。

もしかすると、ブレイディも同じように2度と馬に乗れなかったかもしれない。
彼は「運が良かった」方かもしれない。

このレインてめちゃくちゃすごい人だと思っていて。
一時は天才と呼ばれ皆の憧れのカウボーイとしてブイブイ言わせていたその絶頂期に彼は引退を余儀なくされ、言葉も話せない。

でもよく遊びにくるブレイディはyoutubeで栄光のときのレインのロデオを一緒に見ながら思い出に浸るんですけども、いやレインこれしんどくないか?
ブレイディ残酷すぎね?

でもね「みんなの憧れのロデオボーイ」だった自分と今の自分を比べて卑屈になったり、また馬に乗りたいけど乗れなくて憤ったりとか全然なくて、本当に楽しそうに2人で見てるの!

こんな崇高なシーンなかなかないぞ??

父親はブレイディの大切な馬、ガスをトレーラーの借金を返すために売ってしまう。
胸を痛めながら最後にガスに乗り草原を走る姿はなんとも言えず。

しかも売られていったガスを思いながら昨日一緒に走った草原を一人で歩くブレイディと美しい空。

この草原と空に浮かぶ雲の合間に刺す光の三層構造の絶妙な色味がすごおい効果的な演出を見せています。

そんな哀愁のブレイディに馬の調教依頼が舞い込む。

両親から直接教わった調教の腕は素晴らしく、ブレイディは初対面の馬ちゃんに優しく話しかけ何度も褒めて褒めて伸ばす方法。

同じように実家の馬場に現れたあらくれ馬に可能性を見出したブレイディ。
しかし買う金がねえ。

そしたらなんとパパンがそのアポロという名前の馬ちゃんをプレゼントしてくれる。

先に躾けた馬ちゃんよりも到底暴れまくるアポロ。
落馬して以来ロデオに出れなくなっているブルボーイのブレイディにとってはこの馬ちゃんの憤りが分かるのかも。

何度も「きみはいい子」と繰り返し一緒にガスと最後に走ったあの草原に歩み出る。

なんとか馬の調教師として稼ぎ、ロデオ大会に復帰したいブレイディを再び後遺症が襲う。

これね、本当にね、最初の怪我の時にちゃんと入院して完治してリハビリまでしてたらこうはらならかったかも、と思うと、もうお前!なめんな!って思った・・・。

医者の言うことを聞いて再びスーパーのバイトに帰るが心ここにあらず。

自分の憧れだったレインにリハビリセンターでロデオに模した丸太でロデオ体験を手伝ってあげる。

先にも書いた通りこの2人は恐ろしく崇高で卑屈な部分が全くない。
レインは自分のイケてるロデオ経験を追体験できるのだ。

本当に優しいしレインへの愛に満ち満ちているのですが、自分も怪我で同じようになるかもしれないという不安で堪えていた涙を流してしまう。

カウボーイ・ブルボーイとして生まれ育ち、諦めきれない夢ロデオへの想いと全ての美しい馬たちへの愛情。
そして大切な家族への想い。

大会の日にはいつものカウボーイハットに鳥の羽を刺しているのもカッコいい。

彼が選んだ道はとても崇高だ。
そう言えばセリフにもあったね。
人間とは・・・。

いや、そもそもブレイディは徹頭徹尾崇高だったじゃないか。

この時は特に草原、夕陽、空のコントラストは今まで見せなかった新たな色を魅せる。

苛立って他人や馬ちゃんに八つ当たりすることもなく、でもレスリングの子にいじわるしたりしちゃって・・・唯一人間らしい一面だった。

わりとスタティックなドラマで繊細な演技が光るブレイディ・ジャンドローさん(ハンサム)の経験を元にクロエ・ジャオが書き下ろした自伝を基にしたフィクション。

彼の家族は実際の家族でロデオ仲間は実際のロデオ仲間です。
名前もそのまんま。

え・・・うそ・・・すごい本物の俳優さんて言われても気づかないよ。

でもだったら馬ちゃんの扱いと馬ちゃんの調教クルーすげえな!ってなるし考えたら、そっちの方がお金かかりそう!

寝てるブレイディが妹のリリーに身体と顔に星のシールをペタペタ貼られるエピソード可愛いし、そのシールを捨てずに自分の部屋に飾ってるのほんま優しい!

なんて愛情深き青年なんだ・・・。
きっとレインと一緒にブレイディのyoutubeも見てるんだろうな。

あと、音楽の趣味がとてもいい。


日本語字幕:片山 貴子
Aya

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