土橋章宏原作小説「幕末まらそん侍」の実写映画化作品。幕末の藩で行われた、日本史上初のマラソン大会といわれる安政遠足を舞台に、様々な事情を抱えながらこの遠足（とおあし）＝マラソンに参加する侍たちを描いた、時代劇ドラマ。
雰囲気は硬派な時代劇に見えますが、脚本・演出ともにボロボロで、何がしたかったのかよく分からない作品でした。群像劇っぽい作りで「幕府の隠密として藩に潜入している藩士」「平和ボケした侍を鍛えるために遠足を発案した藩主」「江戸に出てみたい姫」「引退を促されたが若いものには負けじと少年と参加した老侍」「藩一番の俊足だが、八百長を持ちかけられる若侍」など、どれも面白そうなキャラクターがそれぞれの事情で遠足に参加するのですが、どのストーリーも中途半端に触れられるのみで、クライマックスと思われるチャンバラでうやむやになっていました。題材が面白そうな分、とてももったいないです。
また、最大の欠点としては、「サムライマラソン」というタイトルなのに、そのマラソン＝遠足が、物語の本筋になっていない点です。もちろん話のきっかけではあるのですが、本筋的にはマラソンは関係のない藩と隠密の陰謀の争いで、それに全く興味を持てないので、観た人の期待を悪い意味で裏切る形になっているかと思います。
ほか、「姫が男装して、あんなに気がつかないのはおかしい」「無駄なスローモーション演出の多用」「刺客の戦略がお粗末すぎ」「そもそも主人公の早とちりからの誤りが原因」「思わせぶりなセリフが多いわりに、大したことを言っておらず、さらに現代的な口調」など、あげればキリがない粗が目立ちました。
恵まれた題材、豪華なスタッフ、役者陣が揃っているのに、とても残念な作品でした。
