KUJIRA

Fukushima 50のKUJIRAのネタバレレビュー・内容・結末

Fukushima 50(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

Fukushima 50。東日本大震災の時に、原発に残って奮闘した人達。
もうこれだけで満点☆5。

恥ずかしながら、海外でそう呼ばれている事を知ったのは結構最近。

当時はメディアも大混乱していて、情報が錯綜していた。
現場は、それ以上なのは間違い無い。
今のコロナ騒動に似ている。

地震から始まる構成に、こちらも前のめりになる。
まずは家族の話で引っ張る展開だろうと油断していたから、いきなり地震に遭遇したのと似た様な感覚に陥った。
緊張感漂う現場。そこへ大津波が来て浸水。

ここでタイトル
「Fukushima 50」
ヤられた。

あの時の現場の緊迫感、必死さ、そう言う物が真摯に描かれている印象。
これは凄い。

命を賭して行動する人、無理せず断念する人、危険を冒さない人。実話に基づいているとは言え、人物描写が生々しい。
命が惜しい人を、卑怯者に見えない様に描いている。

現場の奮闘振りに水を差す幹部共。
本来なら憎っくき役所なのだが、不思議と悪者に見えない。
平気で悪態をつく、反抗的な吉田所長が、観客の想いを代弁してくれる。

混乱に拍車を掛ける総理。
あんたが現場に行っても仕方無いし、対応に時間を取らせるだけ。
なのだが、やっぱり憎めない。
当時は、「こいつ何やってんの!」って怒り心頭だった記憶がある。

監督が公平な目線で描こうとしているのが分かる。
総理や幹部をディフォルメして、如何にもな悪者として描く方が楽だろう。

あの時、皆がどうして良いか分からず、皆がどうにかしなきゃと考えてた。
そう言う事なのだ。

折角、災害に観客を問答無用で放り込んだのに、中盤から、家族の描写を中途半端に入れて来る。
これはテンポが悪くなっていて、余分だと思う。
写真ぐらいで良いし、泣かせたいなら、現場の描写で何回も泣いている。
そう、何度も涙が溢れてしまったから、不満点が多少あろうが、☆5なのだ。

どうせ家族を描くなら、何故避難所の生々しさを盛り込まないのか。避難所のシーンがあるのに。
避難所の大変さは何一つ描かれていない。
近頃、問題となっている避難所でのセクハラ被害。敢えて今、東日本大震災を取り上げるなら、絶対に取り入れて欲しいタイムリーな要素。
狭っ苦しい、寒い、それすら無い。
心温まる炊き出しのシーンも無し。

邦画のセリフが所々聞き取れない。
字幕が欲しい瞬間。

未だに原発推進派の人が多いのが理解不能。
「安全だから事故なんか起きない。」
事故が起きたら、
「あれは人為的なミスだから」
説明になって無い。

事故が起きた時に、制御不能になる技術を使ってはならないと思うのだが。

最悪半径250キロ圏内に人が住めなくなる。それを安全とは言わないし、そのリスクを負う覚悟があるのかと問いたい。そんなに原発が良いなら、補助金無しで近くに住んでから言って欲しい。

経済的に優れていると言う。
使用済み核燃料を最終処分するまでに掛かるコストは?膨大な水と時間、人件費に土地代。一体何年管理すれば良いのか。最終処分場も無いのに稼働させるのは暴挙。
そろそろ原発が軒並み耐久年数を超えて来ているが、解体のコストは幾ら掛かるのか。放射能がある分、作業速度は限られるし、安全になる期間も必要。
原発の廃炉、解体に幾ら掛かるのかは誰も知らない。まだ廃炉した事が無いからだ。

推進派の人達は、電力生産コストの事しか言わない。

トータルコストで考えて、本当に安いの?
廃炉は子孫に押し付けるから関係無いと言う考えだろうか。
KUJIRA

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