KUJIRA

PERFECT DAYSのKUJIRAのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

如何にも実直そうな実力派俳優の代名詞である役所広司主演。
クソ真面目なトイレ清掃員の日々を切り取った物語。
こんなの役者が本人役で出るぐらいの反則技。

アラームでは無く、ホウキの音で目覚める。
目覚めた直後から、布団を効率良く畳みながら起床。
理想的な起き方。
とても真似出来ない。

歯を磨き、身だしなみを整えたら、趣味の鉢植えに水やり。

缶コーヒーを飲み、車でテープを聴きながら出勤。

昼休憩は神社で。
趣味のカメラ撮影。

仕事が終わったら銭湯。
その後、いつもの店で軽く一杯。
布団で読書して、眠くなったら寝る。

休日は、少し遅く起き、コインランドリーとフィルムの現像、写真の整理。
ママの店で一杯。

ずっと見ていられる。
密着ドキュメンタリーの様な現実感。
一つ一つの所作から生み出される日常の音達。
家のテレビでループ再生して流しっぱなしにしたい。

一方、没入感を妨げる要素も散見される。
日本の素朴な日々、思いっ切り東京の背景。
そこに流れる昔の音楽。なのに、全くノスタルジックじゃない。
70年代の洋楽だったか、合わねぇ〜。
聴かねぇ〜。
音楽掛かる度に現実に戻される。
ちょっとオシャレさが鼻に付く。
演歌とは言わないが、もっと合う曲があるだろうに。
ただの監督の趣味か。


夢のシーンの描き方が独特。
まぁ夢なんて意味不明でしょ、と言われればそうなのだが。
毎回寝るシーンはあるのだから、夢が無くても寝たと分かる。
いちいち差し挟むなら、もっと先を暗示するか過去の物語を投影して欲しい。
毎度集中が途切れるのは勘弁。

柄本時生。
とにかく騒がしい。
モラルも人徳も責任感も無い。
無口で模範的な主人公の対比としてのキャラクターなんだろうけど、ノイズでしか無い。
主人公と噛み合う要素が皆無。
テープを売ろうとする件は酷い。
女に貢ぐ金が欲しいけど金が無い🟰テープ売りましょう。
いやいや、テープを売ったとしても、その金はお前の物じゃないだろ。

俳優陣の演技は、全体的に自然体で素晴らしい。
そこに差し込まれる不自然な演出が残念。
人力車を眺めたり、姪っ子と一緒に自転車で走っている時に橋の真ん中で止まったり。
何気無い日常、ナチュラルな作風の中の異物であり、何かを押し付けられた様な居心地の悪さを感じる。

流石に何か意味のあるシーンを入れたかったのだろうか。
唐突に非日常を織り交ぜて来る。
この非日常が過剰だから、作品のバランスが崩れている。

疎遠にしてた姪っ子が急に押し掛けて来るファンタジー。

会社の後輩が急に辞めると電話して来る。
この無責任な辞め方で律儀に電話して来るパターンは稀。

いきつけのスナックママがたまたま男と抱き合っているのを目撃。何故かドアが半開き。
川沿いでやけ酒してたら、ママと抱き合っていた男に話し掛けられる。どうやって見つけた?
ガンで余命僅か、急に元嫁に会いたくなった。7年振りに。そのワンチャンにたまたま遭遇する確率。
あいつを宜しく。これほど傲慢で鬱陶しいセリフは無い。

最後の出勤中に涙目の長回しが意味不明。
どう言う感情?どこのシーンからの涙??

主人公はかなり良い所の家柄だと分かるシーンがありながら、家を出た理由やトイレ清掃員になったキッカケなどは描かれない。
無くても良いけど、それならあの最後のシーンも無しにして欲しい。
あのシーンありきなら、もうちょっと背景を描かないと繋がらない。

それでもいつもの日常が続く、と言うなら起こるイベントがヘヴィ過ぎる。

逆に、いつもの毎日から解放されて、一歩前に踏み出せました、と言うパターンの場合、主人公の日々が不幸だった事になる。
それは成立しない。
何なら羨ましかったから。

妻も子供も友達も居ない。
そう言うキャラは必ず不幸に描かれる。
もしくは、妻や友達を得てハッピーエンド、みたいな。

ラストのあのシーンまでは、家族も友達も居なくても誰でも幸せになれる、幸せは日常に潜んでいる、そう言う受け止めだった。

ちょっと混乱。
最後の揺らぎの説明から行くと、良い事も悪い事もあるさ、的な??????

金髪で無愛想で合わないと思ってたら、自分の好きな音楽を良いねって言ってくれる女子。
隣で弁当食ってる女。
何だか気になるの分かる〜。
KUJIRA

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