KUJIRA

カラオケ行こ!のKUJIRAのネタバレレビュー・内容・結末

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

なかなかの良作。
中弛みも無く程良いテンポ。
コミカルな作風。

とても見易い。

綾瀬剛の演技、キャラクターも文句無し。

なのだが。
正直、映画と言うよりはスペシャルドラマ。
映画館で観なくて後悔する事は無い。

まず、ヤクザの扱いに終始疑問。
ヤクザ🟰絶対悪だとは思わないが、
良いヤクザ、と言うのは居ない。
良い泥棒、良いレイプ魔、良い殺人鬼が居ないのと同じ。

綾瀬剛演じる狂児は、作中悪い事を一つもしていない。
他の組員達も粗暴ではあるが、何もしていない。
破門になった奴が絡んで来るシーンはあるが、破門されて組員では無い。
その上、それを助ける狂児が描かれている。

中学生に下手とかカスとか暴言吐かれても、ほぼ聞き入れているヤクザ達。
ラスト近辺では、一番恐怖キャラとされていた組長が涙からの何ちゃってポーズ。

世の中が暴力団撲滅に舵を切ったご時世に、怖いけど良いおじさん達の様に描く事に、強烈な違和感がある。
スポンサーがヤクザなのだろうか。

とは言え、ヤクザ全否定論者でも無い。
必要悪の側面もあるのは事実。
はみ出し者の受け皿が無い世の中は、別の問題を引き起こす。

例えば、調子に乗った者が暴れたり悪さをした時に、懲らしめたり歯止めを掛ける連中が今は居ない。
ヤクザの代わりに好き放題やる連中が増えてしまった。
これは悪化。
何故なら、ヤクザの世界にも守るべきルールがあるから。
ヤクザですら無い無法者には、ルールが無い。限度が無い。
これはとても恐ろしい事。

ただし、ヤクザを推奨する気も無い。
私は暴力の類は大嫌いだ。

けれども、何の制約も無く自由にしたら社会は成り立たない。
警察も裁判も無い世の中を想像してみたら分かる。ちなみに、彼らはルールの範囲でしか動けない。

それはさておき、中学校のシーンは割と好き。
お節介な女子、反抗的な後輩。
良いねぇ〜。
芳根京子の底抜けに明るい先生、お母さんの坂井真紀。
こんな人が周りにいたらな。

中学生の岡くんの描写は、最後まで不自然に感じた。
あの時期の声変わりは常識なのに、それを腫れ物を扱う様に周りが隠す謎。
声変わりで上手く歌えないのと部活をサボるのは違う話。
反発する後輩も、声変わりの事が全く頭に無い。自分だって無縁では無いのに。

狂児が岡くんに絡む動機も弱い。
部長だったら教えるの上手い、と言う理論なら間違い無く一位の部長を狙う。
しかも、岡くんは終始まともなアドバイスをしていない。
曲を変える提案、オススメの曲以外は何も参考にならない。
あれでカラオケ誘い続けるのは説得力が無い。

また、岡くんの動機も弱い。
知らないおじさん、しかもヤクザにホイホイついて行くだろうか。
特に序盤は嫌がってるのに、結局行ってしまう。
逃げ場として居場所が欲しかったのかもしれないが、あの先生、あの同級生、あの家族で、それは贅沢。
映画同好会もあるし。

そう言う所が気になって没入しきれなかったのが残念。
KUJIRA

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