【賛否両論待った無し!】
ご存知、手塚治虫原作の漫画の映画化作品である。
既に原作が存在する作品ということで、必然的に比較対象が存在している訳である。
この作品に関しては、原作があまりにも素晴らしいため、ある意味においてはそれは幸福なことではあるが、一方では、不幸でもある。
作品の世界観については、かなり原作を忠実に再現しようとした、努力の跡が見られる。
特に、冒頭のシーンについては、作品の世界観が良く引き出されていて、引き込まれる。
映像は全体を通じて、美しいのであるが、何処か妖しい輝きを感じさせ、現実と非現実の狭間を曖昧にしている。
流れている音楽も同様であり、昭和の暗がりに迷い込んだようでもある。
しかし、実はこの作品の舞台は現代であり、ここに一つのギャップを感じる。
ばるぼら役の二階堂ふみは素晴らしく、中性的でありながらも、子供のような可愛らしさと女性的な美しさが、同居しつつもせめぎあう、ばるぼらのキャラクターを体現出来ているように思われた。
また、美倉役の稲垣吾郎も素晴らしく、一見マトモと思わせておいて、内面にアブノーマルを潜ませている美倉という人物を上手く表現出来ていた。
しかし、ばるぼらの存在や、美倉とばるぼらの関係性については、言葉足らずであり、こちらは少々残念であった。
もう少し、三倉とばるぼらの関係性や、人間の業について掘り下げていただけていれば、ここの文面も人間の業をテーマとしたものに出来たのであるが。
ともあれ、映像作品としては、かなり好きな部類に入るこの作品。時代不明なアングラ感がたまらない。賛否両論待った無しであるが、不思議な中毒性がある。