やまモン

ばるぼらのやまモンのレビュー・感想・評価

ばるぼら(2019年製作の映画)
3.7
【賛否両論待った無し!】

ご存知、手塚治虫原作の漫画の映画化作品である。

既に原作が存在する作品ということで、必然的に比較対象が存在している訳である。

この作品に関しては、原作があまりにも素晴らしいため、ある意味においてはそれは幸福なことではあるが、一方では、不幸でもある。

作品の世界観については、かなり原作を忠実に再現しようとした、努力の跡が見られる。

特に、冒頭のシーンについては、作品の世界観が良く引き出されていて、引き込まれる。

映像は全体を通じて、美しいのであるが、何処か妖しい輝きを感じさせ、現実と非現実の狭間を曖昧にしている。

流れている音楽も同様であり、昭和の暗がりに迷い込んだようでもある。

しかし、実はこの作品の舞台は現代であり、ここに一つのギャップを感じる。

ばるぼら役の二階堂ふみは素晴らしく、中性的でありながらも、子供のような可愛らしさと女性的な美しさが、同居しつつもせめぎあう、ばるぼらのキャラクターを体現出来ているように思われた。

また、美倉役の稲垣吾郎も素晴らしく、一見マトモと思わせておいて、内面にアブノーマルを潜ませている美倉という人物を上手く表現出来ていた。

しかし、ばるぼらの存在や、美倉とばるぼらの関係性については、言葉足らずであり、こちらは少々残念であった。

もう少し、三倉とばるぼらの関係性や、人間の業について掘り下げていただけていれば、ここの文面も人間の業をテーマとしたものに出来たのであるが。

ともあれ、映像作品としては、かなり好きな部類に入るこの作品。時代不明なアングラ感がたまらない。賛否両論待った無しであるが、不思議な中毒性がある。