このレビューはネタバレを含みます
映画館で視聴 日本語字幕版
2023年8月頃に日本でも公開されたのは知っていたが、配信やDVDを買ってまで見るのはちょっと…と思っていたタイミングで視聴
寓話的な内容と、現実に存在するアトリエというか家を丸ごとキャンバスにしてストップモーションアニメ的な演出をすることは事前に知っていたが、とてつもない迫力というかアイデアを感じた
いわゆるアニメではないけれど、1コマ1コマを物を動かしたり壁を塗って撮影していくことを考えると、映画としての時間よりも数倍の時間を費やしたことを考えると途方もない
ストーリー面では、「オオカミの家」の意味が、てっきり子供たち（子豚）がオオカミだと思っていたが、主人公のマリアの内なる存在としてオオカミという存在が内在していて、マリアが常に恐れていた「オオカミ」とは、実は自分自身の出自や生活だったことが明らかになり、ラストでは子豚とはコミューン（共同体）の外の人間すべてを指す単語であり、つまり観客のほぼすべてが「子豚」であることが明らかになる
分かりにくい描写や時間経過が特に何を比喩としているのかがつかめなかったが、恐らく解説サイトなどで盛んに議論されているんだろう
映画序盤にチリへのドイツ人入植者のコミューンの紹介があり、オオカミとマリアの会話ではドイツ語、マリアがナレーションや子供たち（子豚）に話しかけるときはスペイン語と言語が異なるのも途中からようやく分かった
意味のある描写だとは思うが、日本語字幕を追うのが精一杯なのでどういう効果があるのかは分からなかった
短い上映時間（約1時間15分）とはいえ、もう一度見ようと思うには体力がいるな～という印象
映画を見た後に、さすがに元ネタを知りたくなって調べてみると、背景となる歴史的な経緯はエスクァイア日本版の記事が詳しい
これを読んでから映画冒頭のコロニーの正当性の主張や、「病院」のシーンが違った視点で見えてくる
同じ題材を扱ったエンターテインメント作品として複数あることも初めて知った
政権に犯された少年たち 連載（全6回）
第1回 小児性犯罪者のユートピア、南米チリの宗教コミューン「コロニア・ディグニダ」事件
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a44571862/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal/
第2回 小児性犯罪者のユートピア、チリの宗教コミューン「コロニア・ディグニダ」の実態
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a44916781/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal-paul-schaefer-pedo-psychopath-2/
第3回 戦慄のカルト共同体コロニア・ディグニダで行われた少年たちへの拷問
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a44925499/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal-paul-schaefer-3/
第4回 右翼と手を組んだ小児性犯罪者カルト、コロニア・ディグニダ
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a44930844/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal-paul-schaefer-4/
第5回 ペドファイルの権力者に対し無力だった国連人権委員会
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a44944319/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal-paul-schaefer-5/
第6回 ペドファイルの権力者が報いを受けるとき
https://www.esquire.com/jp/culture/column/a45001073/colonia-dignidad-paul-shaefer-pedo-criminal-paul-schaefer-6/
参考資料：
「オオカミの家」の感想考察～前提知識ありとなしでは全く見方が違う映画～｜ばくの子
https://note.com/sakuratsxxx/n/nf1eb61bc96c0
この映画本体とは離れるが、同時上映された「骨」の方がおそらく貴重、権利者の意向で個人での所有を許可していないので、映画館や上映会か、ニューヨークの美術館まで行かないと見れないようだ
