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接吻の一のレビュー・感想・評価

接吻(2006年製作の映画)
3.9
小池栄子の独壇場

無差別殺人犯とその犯人に一目惚れした女、弁護士の男女3人が織り成す究極の愛を描く

構成が精妙でタイトルの“接吻”が予想だにしない形でベールを脱ぐ

終始鬱々とした雰囲気の中、緊張感が持続するシンプルで無駄のない演出
3人の揺れる動く心情が淡々と描かれていてとても楽しめました

防犯カメラ越しのトヨエツの顔はもはやホラー…
冒頭『淵に立つ』の浅野忠信を思い起こすような恐ろしいサイコキラー感ですが、この映画で描かれるのは犯人の狂気や異常性ではありません

もちろん狂気は感じるのですが、目を着ける場所はそこでは無く人間の深層心理にある究極の愛

なのでサスペンスを期待して観るのはちょっと違うかも知れません

登場人物はほぼ小池栄子 豊川悦司 仲村トオルの三人だけ
この三人の演技合戦だけでも見応えが半端じゃなかった
特出すべきは小池栄子とトヨエツの“目”
表情というよりも“目”から痛いほどの孤独感が伝わってくる演技

トヨエツが寡黙なのに対して小池栄子の捲し立てるようなセリフ
この二人のバランスが絶妙でワクワクする

小池栄子がとにかく凄い…凄すぎる
ゾッとするほどの存在感でトヨエツのサイコ感が薄まってすらいた
どの作品を観ても彼女の演技は目を見張るものがあるし、これからもどんどん大化けしそうな予感

これほど素晴らしく重厚な作品なのに知名度が低いのが不思議
重めの邦画好きなら間違いなく楽しめる1本です

2020 自宅鑑賞 No.232 GEO
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