女3人を誑かす男の孤独になど寄り添えるのだろうかと構えていたが、血を吐く自身を見つめる他者を見て「良い眺めだ」と言い放つ太宰には、意外かつ強烈な共感を覚えた。
他者に自身の内側を目撃された瞬間にある肯定感、普段決して向けられることの無い目の色に幸福を感じる事はとても理解出来る。
中盤への突入すら待たずして動き出す女達の思惑が太宰を呑み込んでいく様も相まって、これが案外太宰の孤独に深く寄り添える構成になっており痛快。
太宰の孤独を理解出来るからこそ尊く映る『ヴィヨンの妻』こと美知子の姿勢に圧倒されつつの、あのラスト。
孤独が覆うムードの中を結局は絢爛に駆け抜ける3人の女が眩しい。
太宰治と3人の女、その両方が「しがらみ」に引っ張られながらもそれすら利用していく顛末は、作家という人種の心中にある深淵を垣間見ながらも終始愉快だった。