中産階級ぶたくんを舐めるな

ロボット2.0の中産階級ぶたくんを舐めるなのレビュー・感想・評価

ロボット2.0(2018年製作の映画)
4.7
【マイケル・ベイの精神はインドに受け継がれる】
藤岡弘、とともに早くエクスペンダブルズに合流して欲しいことで知られる(個人の意見)ラジニの新作。一作目の超イイ女は声のみの出演、今度も似たようなエロい姉ちゃんがアンドロイド役で出演、チッティがフランケンシュタインの怪物だとしたら、その花嫁にあたるキャラクターですね。
映画自体は凄い楽しくて良かったんですが、その前に2つ不満が。
一つ:日本の劇場で見れるのは恐らく”国際版”ですよね。ミュージカルシーンがほぼない!心がときめいて風に前髪がなびくというこのご時世には考えられないようなシーンで本来8分前後の御歌があるはずなんですが、カットされて「映画的に見やすく」されているんですよね。そもそも芝居がすべて吹替られていたり、歌は俳優の声ではなかったり、独自のルールのもと、作られている異国の映画である。ということを踏まえた上でこっちは観に行ってるので、最も長くて大丈夫です。Blu-rayとか出すタイミングで完全版を見せてほしい。
二つ:これは映画という娯楽を楽しむ障害以外の何物でもない問題ですが、劇中喫煙シーンがあるたびに右下に注意通知が出るんですよ「喫煙は肺がんを引き起こす原因です」と。エンドクレジットならまだしも、映画見てる最中に画面の隅を邪魔してまで訴えるから興醒めであり、表現に対する冒涜といっては大袈裟ですが、インドでそのような法律があるなら、クソです。
他国と比べてインドには映画における年齢制限概念がないのかもしれません。対して調べていないので、分かったようなことは言えませんが大衆娯楽であるインドでの映画は大人向け子供向けの棲み分けがなく、一律で全年齢対象なのかもしれません。(にしては残酷表現とか寛容なのなぁ)
、、といった不満を垂れましたが、やっぱり面白いものは面白いですよ。
ジャンル映画における「定型」は時として如何にジャンルを衰退させるか、とても考えさせられる映画だったなぁと。
超大作SFとして連想する映画はきりがなく、一作目の敵が二作目では人類の味方ロボになる展開は『ターミネーター』だし、一作目のヒロインが訳あって出てこないのは『トランスフォーマー』だし(こじつけ)チッティ2.0のスーツデザインは色こそ違えど、もろに『ブラックライトニング』のスーツだし、終盤の巨大化、荒唐無稽を超える展開は『ニンジャバットマン』です。こうやって無限に作品をあげつらってパクリだと言いたいのではなく、ジャンルのクリシェ、お約束は過剰に盛り込んで供給する度に、切り捨てるべきものを伴うことがあるということです。
今回の見どころ大量のスマホが雪崩のように押し寄せ人を殺しまくる一連のシーン、引きのシーンやアングルを変えるなど、見せ方に余念がないのは感心なんですが、このスマホの波一台一台は個体として描きこまれていないんですね。無理だし、リアリティを持たせる限度、ご都合をどこまで都合とするかが「ジャンル的な型にはめる作業」に繋がるんだと思います。そこが粗削りだからこそ面白いのであり、ただその定型に耽溺するだけの映画がジャンルへのリテラシーを貶めるんだと思います。何とは言いませんが。
「過剰なサービスx粗削りな定型の模索」ここに対する美意識がかなりマイケル・ベイ的であると感じました(念のため断っておきますがどっちも褒めてます)愚直な美意識を前にテーマ性が雲隠れしてしまう点も似てますしね。敵の鳥怪人の「最近の奴はSNSのニュース記事を見て我関せず、問題が起こっていてもリツイートして終わり。関心を持つのはその一瞬だけで何もしない。心を痛めていますというポーズだけだ。」という訴えも的確で現代生活の意識そのものを見直させる問題提起でした。が、印象に残るのは小型の3.0やら球状に密集してマシンガンをでたらめに乱射するアレの数々、楽しければ何でもいい。と何かを心に残し続けるものの境界線はいまだ見つかりそうにないです。