LalaーMukuーMerry

ジョジョ・ラビットのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.3
10歳のドイツ少年の空想上の友達が親しみやすい感じのアドルフ・ヒトラー・・・???、ヒトラーユーゲント(ナチスの青少年教化組織)の訓練の様子のおふざけ感や、ゲシュタポの大尉のおバカ感はMARVEL作品のようなにおいがする。一方で、こだわりのあるきれいな画面構成や音楽センス、登場人物たちの感情を抑えた表現は私の好きなウェス・アンダーソン作品に似ている気もする。
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戦争やユダヤ人差別を扱った作品にしてはやけに明るい雰囲気や、これはないよねというような設定・演出に始めはちょいと戸惑いがありましたが、そこに気をとめることなく見た2回目では、伏線の妙や、素敵なメッセージに、とても良い作品だと感心しました。この感覚は「ライフ・イズ・ビューティフル」に出会った時と似てるな、とも思いました。
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ボクの名はジョジョ、10才の男の子。パパは戦争に行ってるからママと二人暮らし。はやく大きくなってヒトラーのために戦いたい。週末にはヒトラーユーゲントの訓練に初めて参加できるのでワクワクしている。頑張るぞ~!
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でも「首をへし折ってウサギを殺せ!」という命令を、ボクはできなかった。自分にがっかりだ。でもママ(=スカーレット・ヨハンソン)はそんなボクを誉めてくれた。
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ママが留守のある日、ボクはとんでもない目にあった。うちの家の壁の中に秘密の隠し部屋があってユダヤ人の女の子が隠れていたのだ。ボクより5歳くらい年上のその女の子に、「この秘密を誰かにバラしたら、あんただけじゃなく家族全員が殺されるわよ」と脅されたので、しかたない、黙っておくことにした。
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でもしゃくだから、黙っているかわりに、ユダヤ人のことをその子に詳しく教えてもらって、ユダヤ人についてレポートを書くことにした。これをキャプテンK(ヒトラーユーゲントの隊長)に見せれば、ボクを見直してくれるかもしれない。
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エルサ(女の子の名)に教えてもらううちに、ユダヤ人というのはボクが思っていたような世にも奇妙な下等生物ではなくて、僕たちドイツ人(アーリア人)とあまり違わない人間のように思えてきた。エルサは「ユダヤ人はあんたの頭の中にいるのよ」と言った。
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エルサにはネイサンというフィアンセがいたらしい、今はフランスでレジスタンスをしている。ボクはいたずらを思いついた。ネイサンの偽の手紙をつくってエルサに読み聞かせてやろう・・・これはうまくいった、っていうかやり過ぎたかも。泣き出したエルサを見てボクはうろたえた。あわててフォローの手紙を捏造してもう一度読み聞かせたら、彼女はなんとか機嫌を直してくれた。
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「あんたは恋をしたことがないわね」
・・・?

ママに恋のことを聞いたら、「恋をしたらおなかのあたりがモゾモゾと痛くなる、そうねぇ、蝶々がたくさんいるみたいな感じね」と教えてくれた。
・・・???
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その後、悲しい出来事と、うれしい出来事が両方あった。うれしいことは戦争が終わったこと。悲しいことは大切な人たちが亡くなったことだけれど、その人たちのおかげでボクは生き残ることができたんだと思う。空想の友達アドルフとは縁を切ることにした。
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実はその前に、ボクは「おなかの中に蝶々がたくさんいてモゾモゾと痛くなる」経験をしていたのだけれど、それは僕だけの秘密。エルサは自由になったら、一番最初にしたいことは踊ること、と言っていた。僕はダンスに誘ってもらえるかな?