LalaーMukuーMerry

新聞記者のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.4
この作品と「i-新聞記者ドキュメント」は必ず見るつもりでいたのだが、いざ見る段になった時、安倍総理がまさか辞任しているとは思いもよらなかった。それはともかく、安倍総理在任期間(2013-2020)の後半は森友学園問題から始まって、長期政権の奢りと腐敗が次々に表面化し、その対応ぶりがお粗末というか(嘘をついてるのが見え見え)、口では謝るけれど全く反省してないのが見え見えというか(公文書管理をまともにやる気は全然ない)、ひどいものでした。(安倍政権の評価すべき点もありますが、ここではあえて書かない)
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安倍政権では、内閣人事局というものができて官僚人事を官邸が掌握するようになったので、役人の官邸に対する忖度が激しくなった。それに加えて、マスコミをコントロールする方法がとても巧妙だったので、政権批判をあからさまにする新聞・TVの報道は、安倍政権以前に比べてかなり減ったように感じる。
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この作品は安倍政権における政治の裏側の闇を描いている。
スキャンダルが起きる(霞が関のビルから公務員が飛び降り自殺した)。その真相を暴こうと取材を始める一人の新聞記者。これに対し、真実を隠し通して官邸に都合よく事件を鎮めようと動く内閣情報調査室という部署。 新聞社の経営幹部に圧力をかけて記者の取材を妨害したり、マスコミにリークする情報の管理・統制をする。不正がまかり通るその部署に外務省から出向してきた若手エリート官僚の心の葛藤(彼は自殺した公務員の元部下だった)・・・
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ストーリーは架空のものだが、モチーフとして扱っているのは安倍政権下で起こった(1)加計学園問題と、(2)伊藤詩織さんのレイプ事件だとたいていの人はわかるはず。といっても固有名詞は全て変えてあるし、安倍の名も出てこない。それぞれの事件の説明的会話も決して親切なわかりやすいものではなかったから、将来事件のことをあまり知らない若い人がこの映画を見た時、どこまでわかるだろうと不安が残る。そこはちょっと残念。・・・とはいえ価値ある映画でした。
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私にとって一番印象的だったのは、田中哲司が演じた内閣情報調査室の室長。国家公務員のあるべき姿「国民のために」が、すっかり変り果てて、「国民よりも官邸のために」になっていること。こういう腐った組織がホントにあるんだろうな。多くの若いエリート公務員がこういう上司について、こんな無駄な仕事をさせられているのかと思うと、この国の未来は・・・。