シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

屍人荘の殺人のシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)
3.6
原作シリーズ既読。ミステリの映画化って難しいよね。
原作は国内ミステリ賞堂々の4冠に輝く作品で、特殊設定ミステリの極北ともいうべき、ジャンル跳躍型のクローズドサークルの作り方が大受けしたわけですが、映像として見せられると、案外インパクトがない。
小説では、こういうジャンルはこういうものというお約束があって、読者はそこを強く意識するが故に度肝を抜かれるのだが、映画はそこまでジャンルを意識して観ないので、ふうんこんなものか…となってしまうのか。
後は、小説のように不可能性と不可解性をトコトン強調して、ミスリーディングしてくれないと、驚きも薄まってしまう訳です。ケレン味(とそれを演出するだけの尺)が重要です。
その辺の演出の仕方を考えないと十年に一度と言えるかも知れない傑作ミステリが勿体ないわけで。……原作にないオリジナルギャグで、迷宮太郎…!雲竜型…!とかやってる場合では本当はなかったと思うよ、まあちょっと笑ったけど(笑)
主人公葉村のある重要な行動も端折られている。物語や葉村と比留子の関係に深みを増す部分なのだが、そこまで描いてる時間は無かったのだろう。やっぱりこの手の本格ミステリと映画は尺の問題で相性が悪い気がするなあ。
屍人荘でこれだと、今年のミステリ3冠である相沢沙呼の「メディウム」もいずれ映像化するだろうけど、よくよく吟味してマルチメディア化してもらわんと、と改めて思いました。
それはそうと、浜辺美波は良いですね。
2019年映画(個人的)三大ヒロインのうち、二人(一行瑠璃と剣崎比留子)を浜辺美波が演じている。演技力があるというよりも、ある種、木訥なキャラクターに嵌まるということなのかな。
あと、明智の見せ場が原作より増強されているのはよかった。これは原作から改変されてる部分に関わるものだから、冷静に考えると、そんなに出来が良いわけでもないのだが、でも明智を立てるという方向性は正しい。
原作未読の方は、まず原作を読んでから。先にこちらを観てから、というのは余りにも勿体ないですね。