ひろぽん

天気の子のひろぽんのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.3
離島の実家から家出して東京にやって来た高校生の帆高。職探しに苦労するも、オカルト雑誌のライターとして仕事を見つける。何日も雨が降り続く東京で、帆高は弟と2人で暮らす明るい少女の陽菜と出会う。帆高は彼女が100%晴天にさせる不思議な能力を持っていることに気づき、天気を晴れさせる仕事の依頼を受けはじめる。依頼をこなし疲弊する陽菜の運命は果たしてどうなるのかという物語。


今作の賛否両論分かれる点としては、主人公の帆高があまりにも共感しにくいタイプだからだろうと思う。

離島から家出した理由は、閉鎖された雨が降り続く島から太陽を追って脱出したいという意外に最後まで語られないまま物語を終える。それでいて、親元に帰りたくないと周囲の大人たちに頑なに抗い続け、警察に追われながらギリギリの生活している。たまたま拾ってしまった拳銃をお守り代わりと言いながら、実際に発砲したりするのだから悪い印象しか残らない。陽菜とその弟の凪と一緒に子供たちだけで生活を始めるという時点で、話題のトー横キッズと何ら変わらない存在に近いのかと思ってしまった。

でも、16歳の男子高校生の精神年齢ならこのくらい未熟なんだろうなと思う。純粋で、真っ直ぐで、行動力があって、自分の気持ちに正直に生きる帆高の姿は嫌いじゃなかった。

“拳銃”の扱いが世界に抗う強力な力として描かれている点が面白いなと思った。東京の漫喫にたどり着いた時、帆高の手元にあった本がJ.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の大人や社会に対する憤りを拒否して本当の幸せを見つけていくという本の影響を強く受けているのだろうなと思った。

陽菜の母親を亡くして弟を守っていかなければならないという強い意志や、凪の姉のために少しでも大人にならなきゃというような逞しさを感じた。

子ども3人で28000円の高いラブホに泊まり、疑似家族のような充実した幸せな時間を過ごしているシーンが1番好きだった。救いのない世界に唯一希望を持てる瞬間だった。

ベッドの上で人柱として消えゆく陽菜の姿は儚く美しいものだった。

須賀と帆高の境遇は近く、終盤に彼の流す涙の意味を考えると深い。


“まぁ、気にすんなよ青年。世界なんてさ、どうせもともと狂ってんだから。”

という須賀の言葉は帆高の葛藤の日々を楽にさせたんだろうと思う。

東京の元々200年前は海だった場所が降り続く雨で海に戻ったことや、やれ異常気象や観測史上と騒いでいる昨今のメディアに対する疑問を投げかけるような発言は考えさせられた。何気に警察が悪役のような扱いになっているのが帆高たち子ども目線での見え方なんだろうなと思った。

新海誠監督作品は新作が登場する度の映像のクオリティが高くなっているから凄い。今作は特に雨が地面に叩きつけられ跳ね返る描写がリアルすぎて感動してしまった。空に打ち上がる花火や、歌舞伎町やお台場などの見慣れた東京の街並みが細部まで表現されていて現実の世界と大差ないところが素晴らしい。

『君の名は』の瀧、三葉、テッシー、さやちん、四葉などがガッツリ出演している所も見どころの1つ。瀧と三葉がまだ出会う前なんだろうな。雨が降りやまぬ東京が水没する世界だからパラレルワールドなんだろうね。

RADWIMPSの『愛にできることはまだあるかい』の歌詞も映像に合ってて素敵だ!
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